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障害の捉え方

障害をどう捉えるかは、アセスメントの視点・計画の立て方・本人への向き合い方を根本から規定する。医学モデルから社会モデルへ、ICIDHからICFへという転換を押さえたうえで、法律上の定義と手帳制度を整理する。

医学モデルと社会モデル

観点医学モデル社会モデル
障害の所在個人の心身の機能・構造の問題社会の側の障壁(バリア)
「障害」の意味疾患・外傷等の結果としての個人の属性機能障害のある人と環境との相互作用で生じる不利
解決のアプローチ治療・訓練・リハビリで個人を変える環境・制度・意識を変えて障壁を除去する
支援の主眼機能回復・能力向上参加の保障・合理的配慮・権利擁護

どちらか一方が正しいのではなく、現在の国際的な標準(ICF・障害者権利条約)は両者を統合した相互作用モデルに立つ。実務では「本人を変える支援」に偏りやすいため、「環境を変える支援」の選択肢を常に併せて検討する。

障害者権利条約

  • 2006年に国連総会で採択、日本は2014年に批准した。
  • 批准に先立ち、障害者基本法改正・障害者差別解消法制定・障害者総合支援法への改正など国内法が整備された。
  • 起草過程を象徴する言葉が 「私たちのことを私たち抜きに決めないで(Nothing About Us Without Us)」。本人の参加と意思決定を抜きに支援を組み立てないという原則であり、計画相談の実務そのものに直結する。

ICF(国際生活機能分類)

WHOが2001年に採択した生活機能と障害の分類。それ以前のICIDH(国際障害分類)が「疾患→機能障害→能力障害→社会的不利」という一方向のマイナス面の分類だったのに対し、ICFは中立的な「生活機能」を軸に、環境との相互作用で捉える枠組みに転換した。

構成要素内容
心身機能・身体構造身体・精神の機能、身体の部位手足の動き、視覚、記憶、内臓の働き
活動個人による課題・行為の遂行歩行、食事、金銭管理、コミュニケーション
参加生活・人生場面への関わり就労、通学、地域行事、趣味の集まり
環境因子物的・人的・制度的環境住宅、福祉用具、家族、支援者、制度、周囲の態度
個人因子その人固有の背景年齢、生活歴、価値観、対処スタイル
  • 各要素は相互に影響し合う。機能障害が重くても、環境因子(福祉用具・人的支援・制度)が整えば活動・参加は広がる。逆に環境の障壁が参加を妨げる。
  • アセスメントでは「できないこと」の列挙ではなく、活動・参加の目標から逆算して、機能面と環境面の双方に働きかける発想を取る。障害支援区分の認定調査やアセスメント様式もICFの考え方を基盤にしている。

ICFを計画に落とし込む

サービス等利用計画の「本人の希望する生活」は参加レベルの目標として書く。そのうえで活動レベルの短期目標、機能・環境への働きかけ(サービス・福祉用具・住環境・人間関係)を対応させると、ICFに沿った一貫性のある計画になる。

法律上の障害者の定義

  • 障害者基本法: 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活・社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。社会モデルの考え方が定義に組み込まれている。
  • 障害者総合支援法: 身体障害者・知的障害者・精神障害者(発達障害者を含む)に加え、難病等(治療方法が確立していない疾病等で政令で定めるもの)による障害がある者を対象に含む。対象疾病は追加・見直しがあるため最新の告示を確認する。
  • 18歳未満は「障害児」として児童福祉法のサービス(障害児支援)が基本になる。

障害者手帳3種の比較

項目身体障害者手帳療育手帳精神障害者保健福祉手帳
根拠身体障害者福祉法法律の規定なし(国の通知に基づく自治体制度)精神保健福祉法
等級・区分1〜6級自治体により区分・表記が異なる(重度とそれ以外の別等)1〜3級
判定機関指定医の診断書をもとに都道府県等児童相談所(18歳未満)・知的障害者更生相談所(18歳以上)精神保健福祉センター(医師の診断書等で審査)
有効期限原則なし(再認定の指定がある場合あり)自治体により再判定の運用あり2年ごとに更新

療育手帳は自治体差が大きい

療育手帳は全国一律の法制度ではなく、名称(愛知県では「愛護手帳」等)・判定区分・基準が自治体ごとに異なる。転入者の手帳は再判定になる場合もある。名古屋市の運用は地域情報を確認。

手帳とサービス利用の関係

  • 障害者総合支援法のサービスは手帳の所持が必須要件ではない。医師の診断書・意見書等で障害の存在が確認できれば申請できる(難病等は対象疾病の診断で対象になる)。
  • 一方、手帳が要件・根拠となる制度も多い: 税の控除、公共交通・公共施設の割引、障害者雇用率制度上のカウント、自治体独自の手当・助成など。
  • 実務では「サービスが使えるか」と「手帳が取れるか」を分けて整理し、手帳未取得を理由に支援を止めない。手帳取得のメリット・デメリット(本人の心理的抵抗を含む)を本人と一緒に検討する。

各論ページ

ページ主な内容
身体障害の理解肢体不自由・視覚・聴覚・内部障害、補装具
知的障害の理解定義・療育手帳・ライフステージ・行動障害
精神障害の理解主な疾患・医療との連携・地域移行
発達障害の理解自閉スペクトラム症・ADHD等と支援の配慮
高次脳機能障害の理解原因・症状の特徴・見えにくさ
難病等の理解総合支援法の対象疾病・進行性疾患の支援

相談支援専門員の視点

  • アセスメントは医学モデル(診断・機能)の情報収集にとどめず、活動・参加・環境因子まで含めて本人の生活全体を描く。ICFの構成要素はアセスメント項目の抜け漏れチェックにも使える。
  • 「私たちのことを私たち抜きに決めないで」を計画作成の原則に置く。本人不在のサービス担当者会議・家族の意向のみで進む計画になっていないかを常に点検する。意思決定支援は権利擁護・意思決定支援を参照。
  • 手帳の有無・等級はサービス利用の入口の整理に必要だが、それ自体は支援の必要性を表さない。手帳情報と生活実態のギャップ(等級は軽いが生活の困難が大きい等)にこそ着目する。
  • 制度の対象定義(総合支援法・児童福祉法・難病対策)をまたぐケースでは、どの法体系のどのサービスが使えるかを整理する。支給決定・障害支援区分と併せて確認。

関連ページ

本ページの位置づけ

本ページは支援者向けの概説であり、診断・治療の判断は医療機関が行う。個別のケースは主治医・医療機関に確認すること。制度の詳細は最新の法令・自治体資料で確認する。