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実践モデル・アプローチ
ソーシャルワークの主要な援助アプローチを、相談支援の場面でどう使うかの観点で整理する。理論的な背景(システム理論・ストレングス等)は基盤となる理論・視点、具体的な面接の進め方・質問の仕方は面接技術・コミュニケーションを参照。
一覧比較
| アプローチ | 焦点 | 特に向いている場面 |
|---|---|---|
| 心理社会的アプローチ | 状況の中の人。心理と環境の両面 | 生活歴が複雑で関係形成に時間を要するケース |
| 機能的アプローチ | 機関の機能と本人の意志 | 事業所として何ができる/できないかの整理 |
| 問題解決アプローチ | 問題への対処能力(ワーカビリティ) | 本人と一緒に課題へ取り組む過程を重視したいとき |
| 課題中心アプローチ | 本人が選んだ具体的課題。短期・計画的 | 期限内に具体的な生活課題を解決したいとき |
| 危機介入アプローチ | 危機状態からの早期の均衡回復 | 自傷他害の恐れ・虐待・急変時 |
| 行動変容(認知行動)アプローチ | 行動・認知の学習と修正 | 生活習慣・スキルの獲得、行動上の課題 |
| 解決志向アプローチ | 問題ではなく解決像・例外 | 問題の原因追及が行き詰まっているとき |
| ナラティブアプローチ | 本人が人生を語る物語 | 否定的な自己像が固定化しているケース |
単一アプローチに固執しない(ジェネラリスト実践)
実務では一つのケースに複数のアプローチを重ねて使う。危機時は危機介入で安定させ、落ち着いたら課題中心で生活課題に取り組み、面接では解決志向の質問技法を織り交ぜる——というのが現実的な使い方。アプローチは流派ではなく道具箱である。
心理社会的アプローチ
- ホリス(F. Hollis)らに代表される、「状況の中の人(person-in-situation)」を捉える伝統的アプローチ。心理的側面と社会環境の両面から理解し、支持・受容を土台に働きかける。
- 向いている場面: 生活歴・家族関係が複雑で、信頼関係の形成自体が支援の中心になるケース。
- 相談支援での活用例: 支援拒否歴のある人への継続的な訪問。すぐサービスにつなげず、生活歴の聞き取りと受容的な関わりを通じて関係をつくる基本相談の局面。
機能的アプローチ
- 援助を「ワーカー個人の力」ではなく所属機関の機能を通じて提供するものと捉え、本人の**意志(will)**が機関の機能を活用する過程を支える。
- 向いている場面: 支援の範囲・限界を明確にし、他機関との役割分担を整理する必要があるとき。
- 相談支援での活用例: 計画相談で担える範囲と、基幹相談支援センター・医療機関・行政に委ねる範囲の仕分け。「事業所として何を提供する契約か」を重要事項説明で明確にする発想にも通じる。
問題解決アプローチ
- パールマン(H. H. Perlman)の「4つのP(人・問題・場所・過程)」で知られる。問題解決を本人自身の営みと捉え、動機づけ・能力・機会(ワーカビリティ)を高める。
- 向いている場面: 本人に問題へ取り組む力を育てたいとき。丸抱え支援からの脱却。
- 相談支援での活用例: 手続き・交渉を相談員が代行しきらず、本人が窓口に電話する・見学を申し込むなどの役割を計画に組み込み、遂行を支える。
課題中心アプローチ
- リード(W. Reid)とエプスタイン(L. Epstein)による、短期・計画的なアプローチ。本人が同意した具体的な課題を選び、期限を区切って取り組む。
- 向いている場面: 「あれもこれも」と問題が山積するケースで、優先順位をつけて着手したいとき。
- 相談支援での活用例: モニタリング期間を活かし、「次回訪問までに体験利用を1回行う」など達成可能な短期目標を本人と合意して計画に落とす。サービス等利用計画の短期目標の書き方と親和性が高い。
危機介入アプローチ
- 喪失・急変などで通常の対処能力を超えた危機状態にある人へ、早期に・集中的に介入し、心理的均衡の回復を図る。危機状態は長くは続かず、対応次第でその後の適応が左右されるとされる。
- 向いている場面: 自傷他害の恐れ、虐待の発見、家族(介護者)の急病・死亡、災害、症状の急性増悪。
- 相談支援での活用例: キーパーソンの入院で在宅生活が崩れた際の緊急のサービス調整、短期入所の確保、虐待通報と市町村・基幹相談支援センターとの連携。平時から緊急連絡体制と地域の緊急資源を把握しておくことが前提になる。
危機対応は一人で判断しない
自傷他害・虐待が疑われる場面は、相談員個人の判断で抱え込まず、管理者への報告、市町村・基幹相談支援センターへの通報・相談を必ず並行させる。通報は義務であり、守秘義務違反にはならない。事後に記録を整えることも危機介入の一部である。
行動変容(認知行動)アプローチ
- 学習理論に基づき、行動を環境との関係で捉えて望ましい行動の獲得・不適応行動の減少を図る。認知(受け取り方)の偏りに働きかける認知行動療法の知見も含む。
- 向いている場面: 生活スキルの獲得、行動上の課題への対応、目標をスモールステップに分けたいとき。
- 相談支援での活用例: 直接の訓練は自立訓練や行動援護等の事業所が担うが、相談員は「どの場面で・何をきっかけに起きるか」という行動の文脈をアセスメントで整理し、事業所間で一貫した対応方針を担当者会議で共有する役割を持つ。
解決志向アプローチ
- 問題の原因分析ではなく、解決した状態(ソリューション)と、すでにある例外(問題が起きていないとき)に焦点を当てる短期療法由来のアプローチ。
- 代表的な質問技法:
| 技法 | 内容 |
|---|---|
| 例外探し | 「問題が少しでもましなときはどんなとき?」と、うまくいっている場面を探す |
| スケーリング・クエスチョン | 「今の状態を0〜10で言うと?」「1つ上がるとしたら何が変わる?」と数値で変化を語ってもらう |
| ミラクル・クエスチョン | 「朝起きたら問題が解決していたとしたら、何から気づく?」と解決像を具体的に描いてもらう |
- 向いている場面: 原因追及が堂々巡りになっているケース、本人が問題を語ることに疲れているケース。
- 相談支援での活用例: モニタリング面接で「できていない理由」の確認に終始せず、例外探しで維持できている要因を言語化し、計画の「本人の役割」欄に反映する。ストレングス視点(基盤となる理論・視点)と相性がよい。
ナラティブアプローチ
- 社会構成主義を背景に、本人が自分の人生について語る物語(ナラティブ)に注目する。問題が染み込んだドミナントストーリー(例:「自分は何もできない人間だ」)を絶対視せず、対話を通じてオルタナティブストーリー(別の筋書き)が立ち上がるのを支える。
- 外在化(問題を本人と切り離して名前をつけ、「本人=問題」ではなく「本人 vs 問題」として扱う)が代表的な技法。
- 向いている場面: 長い失敗体験・入院歴などで否定的な自己像が固定しているケース、家族が本人を「問題児」として語り続けているケース。
- 相談支援での活用例: アセスメントで生活歴を「問題の履歴」としてではなく「乗り越えてきた物語」として聞き直す。計画の「本人の希望する生活」を本人の言葉で記載することは、オルタナティブストーリーを公式文書に載せる行為でもある。
相談支援専門員の視点
- アプローチの名称を覚えることが目的ではない。「今この場面で自分は何に焦点を当てているか」を自覚するための語彙として使う。行き詰まったときに、別のアプローチのレンズに掛け替えてみる。
- ケース記録や事例検討で「どのアプローチで関わったか」を一言添えると、支援の意図が伝わりやすく、スーパービジョンの質も上がる。
- 危機介入だけは平時の準備がすべて。緊急連絡先・緊急ショート・虐待通報の手順を事業所内で共有しておく。
- 質問技法(開かれた質問・要約・スケーリング等)の具体的な使い方は面接技術・コミュニケーションに整理する。