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災害時の備え
人工呼吸器・吸引器など電源が生命線となる医療機器を使う人にとって、停電・災害は直接生命に関わる。災害対策は「起きてから考える」ことができない領域であり、平時のサービス等利用計画・モニタリングに組み込んで初めて機能する。本ページでは停電対策・避難の仕組み・備蓄・計画への落とし込みを整理する。
電源が必要な医療機器と停電対策
| 機器 | 停電時のリスク | 主な対策 |
|---|---|---|
| 人工呼吸器 | 停止すれば直ちに生命の危機 | 内部・外部バッテリー、予備バッテリー、手動蘇生バッグ(バッグバルブマスク)の常備と使い方の習得 |
| 吸引器 | 痰の貯留による窒息・呼吸不全 | 充電式・電池式の予備吸引器、手動・足踏み式吸引器 |
| 酸素濃縮器 | 酸素供給の停止 | 酸素ボンベへの切り替え(残量管理)。火気厳禁の徹底 |
| 経管栄養ポンプ・加温加湿器等 | 注入・加湿の停止 | 自然滴下への切り替え手順、人工鼻の準備 |
- 電源確保の手段を複数系統で用意する: 機器の内蔵・外部バッテリー → 予備バッテリー → 発電機・ポータブル電源 → 車のシガーソケット(インバータ) → 避難先・医療機関の電源。それぞれの稼働可能時間を実測で把握し、合計で「何時間しのげるか」を明確にしておく。
- バッテリーは経年劣化する。「買ったときは8時間持った」が当てにならないため、定期的な充電・動作確認をモニタリング項目に入れる。
- 自治体によっては非常用電源(発電機・蓄電池)の貸与・購入補助がある。医療機器業者の災害時サポート体制(代替機の提供等)も契約時に確認しておく。地域の制度は地域情報へ。
- 電力会社・自治体への在宅人工呼吸器使用者の事前登録(停電時の情報提供・優先対応の仕組み)がある地域もある。主治医・訪問看護・保健所経由で確認する。
避難の仕組み — 名簿・個別避難計画・福祉避難所
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 避難行動要支援者名簿 | 自力避難が困難な人を市町村があらかじめ名簿化する仕組み。平時の情報共有には本人同意が関わるため、登録の有無・同意の状況を確認する |
| 個別避難計画 | 名簿登載者ごとに、誰が・どこへ・どう避難するかを定める計画。市町村が作成の主体で、福祉専門職(相談支援専門員・ケアマネジャー等)の参画が期待されている |
| 福祉避難所 | 一般避難所での生活が困難な人のための避難所(福祉施設等を指定)。直接行けるとは限らず、一般避難所からの二次的な移送を前提とする運用の地域が多い |
- 医療機器使用者の場合、避難先の第一候補が**医療機関への入院(またはかかりつけへの避難)**になることもある。「どの警報レベルで」「どこへ」「誰の車で」動くかを、主治医・訪問看護を交えて具体化しておく。
- 一般避難所で医療的ケアが続けられるか(電源・吸引の場所・衛生環境)は平時に確認しておかないと、当日は判断できない。
医薬品・衛生材料等の備蓄
- 目安として数日分以上の備蓄を本人・家族と点検する。品目の例:
- 常用薬(お薬手帳のコピーとともに)、抗てんかん薬等の欠かせない薬
- 経管栄養剤・注入用の物品、とろみ剤・特別な食形態の食品
- 吸引カテーテル、気管カニューレの予備、消毒・衛生材料、手袋
- 蒸留水・生理食塩水等、おむつ、ポータブルトイレ用品
- 飲料水・生活用水(吸引器の洗浄等にも水が要る)
- 持ち出し用(避難時)と在宅避難用(自宅で過ごす場合)を分けて考える。在宅避難が現実的な選択肢になる世帯が多いため、自宅で数日過ごす前提の備えを厚くする。
- 処方薬の入手が途絶えた場合の相談先(かかりつけ薬局・主治医)も確認しておく。
計画・クライシスプランへの落とし込み
- サービス等利用計画に災害時対応の欄・記載を設け、次を明記する。
- 使用機器と電源確保の手段(何時間しのげるか)
- 避難の判断基準・避難先・移動手段・同行者
- 緊急連絡網(家族・主治医・訪問看護・相談支援・電力会社・機器業者)
- 安否確認の方法(誰が・どの手段で)
- 状態悪化時の対応をまとめるクライシスプランの枠組み(クライシスプラン)は、災害時対応の整理にも応用できる。「平時/警報時/発災時」の段階ごとに行動を書き分けると実用的になる。
- 支援チーム(ヘルパー事業所・通所先・学校等)とも共有する。発災時刻によって本人がいる場所は違う。自宅・通所先・移動中それぞれの対応を担当者会議で確認しておく。
災害対策は「計画に書いて終わり」にしない
バッテリーの劣化、支援者の交代、避難先の指定変更、本人の状態変化——災害対策の前提は常に変わる。モニタリングのたびに確認項目として点検し、年1回は本人・家族と避難手順を具体的に確認する(親ページの方針と同じ)。可能なら実際に持ち出し品を持って動いてみる訓練まで行いたい。
相談支援での活用
- アセスメント段階で「停電したら何分・何時間で危険になるか」を確認する。この一問で災害対策の優先度が決まる。
- モニタリング時の定型確認項目に「予備電源の動作確認」「備蓄の期限」「連絡網の変更有無」を入れる(モニタリング)。
- 個別避難計画が未作成の場合、市町村の担当課に作成状況を確認し、福祉専門職として作成に協力する。計画づくりの過程自体が、本人・家族・地域(自主防災組織・民生委員)をつなぐ機会になる。
相談支援専門員の視点
- 災害対策は本人・家族だけで抱えるには重すぎるテーマであり、「考えたくない」と先送りされやすい。恐怖をあおらず、**「まずバッテリーの持ち時間の確認から」**のように小さく具体的に始める。
- 相談支援専門員自身が発災時に駆けつけられるとは限らない。自分がいなくても回る仕組み(書面化・チーム内共有・地域の共助)を作ることが本来の役割である。
- 平時の関係が有事の力になる。日頃から訪問看護・機器業者・保健所と顔の見える関係を作っておくことが、結果として最大の災害対策になる。
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制度・地域資源は必ず最新情報で確認
避難行動要支援者名簿・個別避難計画・福祉避難所の運用、非常用電源の補助等は市町村ごとに異なり、制度も見直される。実務では市町村の防災・障害福祉担当課の最新情報で確認すること。名古屋市の具体的な資源は地域情報に整理する。