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身体障害の理解
身体障害者福祉法上の分類ごとに、実務で押さえるべき特徴・コミュニケーション配慮・関連するサービスを整理する。障害名は同じでも生活のしづらさは環境との相互作用で大きく変わる(障害の捉え方のICFの視点を前提とする)。
身体障害者福祉法上の分類
| 分類 | 主な内容 |
|---|---|
| 肢体不自由 | 上肢・下肢・体幹の機能障害 |
| 視覚障害 | 視力・視野の障害 |
| 聴覚・平衡機能障害 | 聴力の障害、平衡機能の障害 |
| 音声・言語・そしゃく機能障害 | 発声・構音・嚥下等の障害 |
| 内部障害 | 心臓・腎臓・呼吸器・ぼうこう又は直腸・小腸・HIVによる免疫・肝臓の機能障害 |
身体障害者手帳は指定医の診断書に基づき交付される(等級1〜6級)。詳細は障害の捉え方の手帳比較を参照。
肢体不自由
- 主な原因: 脳性まひ(出生前後の脳損傷による運動・姿勢の障害。成人期の二次障害に注意)、脊髄損傷(損傷部位により対まひ・四肢まひ。感覚障害・排泄障害・体温調節障害を伴う)、切断、関節疾患、脳血管障害の後遺症など。
- 移動・動作は車いす(手動・電動)・補装具・住宅改修との組み合わせで捉える。本人の身体機能だけでなく、住環境・移動経路・移乗の介助量をセットでアセスメントする。
- 褥瘡(じょくそう) は長時間同一姿勢・感覚障害のある人の重大なリスク。座位時間・除圧の方法・皮膚状態の確認体制を関係者で共有する。
- 二次障害(頚椎症・関節拘縮・変形・痛み・体力低下など)は加齢とともに顕在化しやすい。「昔できていた動作ができなくなった」変化を計画見直しのサインとして扱う。
視覚障害
- 全盲とロービジョン(弱視) では支援内容が大きく異なる。見え方(視力・視野・まぶしさ)は多様で、「見えているように見えるが読めない・人の顔が分からない」等の困難が理解されにくい。
- 移動支援の柱は同行援護(移動時の援護と視覚的情報の支援〈代筆・代読を含む〉)。白杖歩行・盲導犬歩行の訓練は歩行訓練(自立訓練〈機能訓練〉やリハビリ機関等)で行う。
- 情報アクセスの支援: 音声読み上げ(スクリーンリーダー)、拡大読書器、点字、音声コード付き文書。中途視覚障害者は点字より音声機器の活用が中心になることが多い。
- 声かけの基本: 正面から名乗って話しかける、「あちら」「これ」ではなく方向・位置を具体的に伝える(クロックポジション等)、案内時は腕や肩につかまってもらい半歩前を歩く。
聴覚・平衡機能障害
聴覚障害は聞こえの程度・失聴時期により状況が大きく異なる。
| 区分 | 特徴 | 主なコミュニケーション手段 |
|---|---|---|
| ろう | 主に言語獲得前からの失聴。手話を第一言語とする人が多い | 手話、筆談 |
| 難聴 | 聞こえにくさの程度は幅広い。補聴器・人工内耳の活用 | 音声+補聴機器、筆談、要約筆記 |
| 中途失聴 | 音声言語獲得後の失聴。話せるが聞こえない | 筆談、要約筆記(手話は未習得のことが多い) |
- 「話せる=聞こえている」ではない。中途失聴者は流暢に話すため、聞こえの困難が見過ごされやすい。
- 面談時の配慮: 手話通訳・要約筆記の手配(意思疎通支援事業。市町村事業のため地域情報を確認)、正面から口元を見せて話す、複数人が同時に話さない、重要事項は必ず文字で残す。
- 平衡機能障害はめまい・ふらつきによる転倒リスク・外出困難として現れる。外見から分かりにくい点は内部障害と共通する。
音声・言語・そしゃく機能障害
- 喉頭摘出による音声機能の喪失、構音障害、失語症(高次脳機能障害に伴うものは高次脳機能障害の理解参照)、嚥下障害など。
- 「話せないこと」と「理解できないこと」を混同しない。本人の理解力に応じた手段(筆談・文字盤・意思伝達装置・代替音声)を確認する。嚥下障害は食形態・誤嚥リスクの情報共有が生命に関わる。
内部障害
外見から分かりにくく、周囲の無理解にさらされやすい障害である。疲れやすさ・通院頻度・生活上の制約を丁寧に聞き取る。
| 機能障害 | 実務で押さえるポイント |
|---|---|
| 心臓 | ペースメーカー使用者を含む。負荷制限・疲労しやすさ |
| 腎臓 | 人工透析の場合は週複数回の通院が生活の軸になる。通院手段の確保が課題になりやすい |
| 呼吸器 | 在宅酸素療法(HOT)等。外出時の機器・災害時の電源確保 |
| ぼうこう・直腸 | ストーマ(人工肛門・人工ぼうこう)。装具は日常生活用具の給付対象。オストメイト対応トイレの有無が外出の制約になる |
| 小腸 | 中心静脈栄養・経管栄養等の栄養管理 |
| HIVによる免疫 | プライバシー保護の徹底。服薬継続と医療連携 |
| 肝臓 | 倦怠感等の変動する体調。移植後を含む |
「見えない障害」への配慮
内部障害・難聴・平衡機能障害は外見から分からないため、「元気そうなのに」という誤解を受けやすい(ヘルプマークはこうした人の意思表示手段)。本人が職場・地域でどこまで開示しているかを確認し、支援者側が無断で開示しない。
補装具・日常生活用具
| 制度 | 概要 | 例 |
|---|---|---|
| 補装具費支給制度 | 総合支援法に基づく。身体機能を補完・代替する用具。市町村に申請し、判定を経て支給(原則1割負担・所得に応じた上限あり) | 車いす、電動車いす、義肢、装具、白杖、補聴器、座位保持装置 |
| 日常生活用具給付等事業 | 市町村の地域生活支援事業。品目・基準は市町村ごとに異なる | ストーマ装具、入浴補助用具、意思伝達装置関連、拡大読書器 |
- 同じ用具でもどちらの制度に載るかは品目により異なり、日常生活用具は自治体差が大きい。制度の全体像は地域生活支援事業、名古屋市の品目・基準は地域情報を確認。
- 補装具は本人の身体状況・生活場面に合わせた選定・適合が重要で、更生相談所・リハビリ専門職(PT・OT)・業者との連携が必要になる。
バリアフリーと合理的配慮
- バリアフリーは不特定多数のための事前的な環境整備(建物・交通・情報)、合理的配慮は個別の申出に応じた個々の調整(障害者差別解消法。民間事業者も提供義務)。両者は補い合う関係にある。
- 物理的障壁だけでなく、制度の障壁・情報の障壁・意識の障壁(心無い言動・過剰な保護)を含めて捉える。社会モデルの視点は障害の捉え方を参照。
- 相談支援の場面でも、事業所側が合理的配慮の提供者である。面談場所のアクセス、資料の文字サイズ・音声化、筆談対応など、自事業所の対応を点検する。
相談支援専門員の視点
- 医学的な障害名・等級より、「どの生活場面で・何に困っているか」 を具体的に把握する。同じ等級でも住環境・家族状況・補装具の適合状況で介助量は大きく変わる。
- 進行性疾患・二次障害・加齢による変化を見越し、モニタリングで身体状況の変化と用具・住環境の適合を定期的に確認する。車いすが合わなくなっていないか、褥瘡リスクが上がっていないかは具体的に聞く。
- 医療との連携が前提となるケースが多い(透析・在宅酸素・嚥下障害・褥瘡管理)。訪問看護・リハビリ専門職を計画に位置づけ、医療情報の共有ルートを作る。
- サービス選定では、身体介護を伴う居宅介護・重度訪問介護、日中活動の生活介護、視覚障害者の同行援護を、本人の生活像に合わせて組み合わせる。
関連ページ
- 障害の捉え方 / 高次脳機能障害の理解 / 難病等の理解
- 居宅介護 / 重度訪問介護 / 同行援護 / 生活介護
- 地域生活支援事業
- 地域情報(名古屋市)
本ページの位置づけ
本ページは支援者向けの概説であり、診断・治療の判断は医療機関が行う。個別のケース(疾患の管理・リスク評価・用具の適合を含む)は主治医・医療機関・リハビリ専門職に確認すること。