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精神障害の家族支援

精神障害のある人の家族は、最も身近な支援の担い手であると同時に、長期のケア負担・感情的な巻き込まれ・スティグマによる孤立を抱えやすい。家族を「本人支援の資源」としてだけ見るのではなく、家族自身を支援の対象として捉えることが、結果的に本人の地域生活の安定にもつながる。

家族が抱える負担

負担の種類内容
ケアの長期化発症が思春期〜青年期に多く、親によるケアが数十年に及ぶ。「親亡き後」の不安が常につきまとう
感情的な巻き込まれ症状の波に一喜一憂する、目が離せない、本人の言動に傷つく。心配と疲弊が怒りに転じることもある
スティグマ・孤立世間体から病気を隠す、親戚・近所に相談できない、「育て方のせい」という誤った自責
生活・経済への影響仕事の制限・離職、きょうだいへのしわ寄せ、経済的負担
情報の不足病気の知識・制度・対応方法を学ぶ機会がないまま、手探りのケアを続けている
  • かつて統合失調症などの原因を家族(特に母親)の養育に求める言説があり、家族を深く傷つけてきた歴史がある。「家族の育て方が原因」という見方は否定されていることを、支援者は明確に伝えられる必要がある。

高EE研究と家族心理教育

  • EE(Expressed Emotion: 感情表出)研究は、家族が本人に向ける批判的コメント・敵意・情緒的巻き込まれの水準が高い(高EE)家庭では、統合失調症の再発率が高いことを示した。
  • 重要なのは、高EEを「家族が悪い」と読まないことである。高EEは知識と支援のないまま長期のケアを続けた結果として生じるのであり、責めるべきは家族ではなく、家族を孤立させてきた支援の不足である。
  • この知見から発展したのが家族心理教育である。病気の知識・薬・再発のサイン・対応方法を家族に体系的に伝え、対処を一緒に考えるプログラムであり、再発予防効果が実証されている。家族が病気を理解し対応の見通しを持つことで、批判や巻き込まれが自然に減る。

「家族の対応を変えさせる」のではなく「家族の負担を軽くする」

高EEの知見を「ご家族が厳しく言うから再発するんです」と伝えれば、家族はさらに自責と孤立を深める。順序は逆であり、家族が休め、学べ、相談できる場を得たとき、結果として関わりが変わる。家族支援の入口は助言ではなくねぎらいである。

家族会・家族教室などの資源

資源内容
家族会同じ立場の家族による相互支援の会。体験の分かち合い・情報交換・孤立の解消。地域の会と全国組織がある
家族教室・家族心理教育精神保健福祉センター・保健所・医療機関等が実施。疾患・制度・対応の学習とグループでの語り合い
依存症の家族教室精神保健福祉センター等で実施。巻き込まれ(イネイブリング)からの回復に焦点。CRAFT等のプログラムもある
レスパイト短期入所等による休息の確保。「家族が休むこと」を計画に位置づける
  • 家族が資源につながるまでには「家のことを外で話す」ことへの抵抗がある。具体的な会の雰囲気・入り方まで含めて丁寧に橋渡しする。地域の家族会・教室の情報は地域情報に整理する。

ヤングケアラーへの視点

  • 親に精神疾患がある家庭では、子どもが家事・きょうだいの世話・親の情緒的なケア・服薬の見守りを担っていることがある(ヤングケアラー)。
  • 子ども自身は「手伝い」と認識し、SOSを出さない。学校生活への影響(遅刻・欠席・学習の遅れ)や、年齢に不相応な責任による心理的負担が見過ごされやすい。
  • 相談支援が世帯に入る際、世帯内の子どもの生活にも目を配り、必要に応じて学校・スクールソーシャルワーカー・子ども家庭部門と連携する。親の支援(ヘルパー・訪問看護等)を厚くすることが、子どものケア負担を軽くする最も直接的な方法である。

家族を「資源」とだけ見ない

  • 支援計画のうえで家族は「見守り」「送迎」「金銭管理」等の役割を期待されがちだが、その前提が家族の限界を超えていないかを常に点検する。
  • 家族の同意・協力が得られないケースを「困難な家族」と見るのではなく、家族が疲弊しているサインとして読む。家族への支援を先に整えることで本人支援が動き出すことは多い。
  • 本人と家族の利害は一致するとは限らない(退院・同居・金銭・入院への同意など)。相談支援専門員は本人の意思を軸に置きつつ、家族の事情も別途受け止めるという二重の役割を意識し、必要なら家族の相談先を分ける。

8050問題との接点

  • 「8050問題」は、80代の親が50代の子を支える世帯の孤立・共倒れリスクを指す。長期のひきこもりだけでなく、精神障害のある人が高齢の親と同居し続けてきた世帯も同じ構造にある。
  • 親の入院・死亡を機に、本人の生活が一気に崩れる(手続き・金銭・食事・服薬がすべて親任せだった)ことが典型的な危機である。
  • 親が元気なうちに、親亡き後を見据えた準備を段階的に進める: 本人名義の手続きの経験づくり、自立生活援助共同生活援助等の体験、金銭管理(日常生活自立支援事業成年後見制度)、緊急時の連絡体制(地域定着支援)。
  • 「親亡き後」の話題は家族にとって重く、避けられがちである。不安を煽らず、**「準備すれば選択肢が増える」**という枠組みで少しずつ扱う。

相談支援専門員の視点

  • 家族面接では、本人の状況を尋ねる前に家族自身の健康・生活・休息を尋ねる。「あなたのことを聞いてくれる人」の存在自体が家族支援になる。
  • 家族の語る本人像(問題行動の列挙)と本人の自己認識は食い違うことが多い。どちらかを正とせず、それぞれの体験として並置して聴く。
  • 家族の巻き込まれが強いケースでは、家族に「手を引かせる」のではなく、家族が担ってきた機能をサービスで少しずつ代替し、家族が家族に戻れるようにする、という順序で考える。

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