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行動障害

自傷・他害・強いこだわり・破壊的行動などが著しく、本人・家族の生活に深刻な支障をきたす状態を行動障害と呼び、特に著しいものを強度行動障害という。行動障害は「本人の問題行動」ではなく本人の困難の表現であり、環境との相互作用の結果である——この捉え方が支援のすべての出発点になる。

行動障害の理解 — 行動は表現である

  • 行動障害としてあらわれる行動(自傷・他害・異食・多動・強いこだわり・睡眠の乱れ等)は、多くの場合本人が困っていることのサインである。知的障害と自閉スペクトラム症を併せもつ人に多くみられる。
  • 背景にあるのは環境とのミスマッチである。
本人側の困難ミスマッチの例
感覚の過敏・鈍麻騒音・照明・接触が苦痛だが、避ける手段も伝える手段もない
見通しの持てなさ予定の変更・待つことの意味が分からず、強い不安になる
要求手段の乏しさ「やめてほしい」「〜がしたい」を伝える手段がなく、行動で表すしかない
理解と経験のずれ分からない要求をされ続ける、失敗と叱責の蓄積
  • つまり行動障害は生まれつきの症状ではなく、不適切な環境・関わりの中で後天的に形成され、強化される。だからこそ環境調整で改善しうる。

強度行動障害の判定 — 行動関連項目

  • 制度上、強度行動障害の状態は障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目(コミュニケーション、説明の理解、大声・奇声、自傷、他害、こだわり等)の評価点を用いて判定され、行動援護・重度障害者等包括支援の対象要件や、事業所の加算(重度障害者支援加算等)の要件に使われている。
  • 点数の具体的な基準値はサービスごとに定められている。詳細は支給決定・障害支援区分と各サービスページで確認する。
  • 認定調査の場面だけでは行動の実態が伝わりにくい。頻度・状況・支援の量が特記事項に反映されるよう、日頃の記録を持って調査に臨むことが実務上重要になる。

支援の基本枠組み

氷山モデル

水面上に見える行動(自傷・他害)は氷山の一角であり、水面下に本人の特性(感覚・認知・コミュニケーション)と環境要因が隠れている、という理解のモデル。見える行動を直接抑え込むのではなく、水面下の要因に働きかける

機能的アセスメント

行動の**きっかけ(A: 先行事象)→ 行動(B)→ 結果(C: 行動の後に何が起きたか)**を記録し、その行動が本人にとって何の機能(要求・逃避・注目・感覚)を果たしているかを分析する。応用行動分析の枠組みであり、詳細は行動変容アプローチを参照。機能が分かれば、同じ機能を果たせる適切な手段(伝える手段・休憩の取り方)に置き換える支援が組める。

構造化

「いつ・どこで・何を・どれだけ・終わったら次は何」が本人に分かるよう、場所・時間・活動・手順を視覚的に整理する。スケジュールの提示、活動と場所の対応づけ、視覚的な手順書など。分からなさからくる不安を減らすことが目的であり、管理のための枠ではない。

記録がすべての出発点

「いつ・どこで・誰といるとき・何のあとに・どんな行動が・どれくらい続いたか」の記録が集まると、行動のパターン(特定の時間帯・特定の要求場面)が見えてくる。相談支援専門員は自ら記録は取れないが、各事業所・家庭の記録の形式をそろえ、担当者会議で突き合わせる場をつくれる。これが相談支援ならではの貢献になる。

関連するサービス・資源

サービス位置づけ
行動援護行動上著しい困難がある人の外出時の支援。危険回避・予防的対応を含む専門性の高いヘルパー支援
重度障害者等包括支援常時介護を要し意思疎通に著しい困難がある最重度の人への複数サービスの包括的提供
短期入所家族のレスパイト・緊急時対応。行動障害のある人の受け入れ可否は事業所差が大きい
生活介護等の日中活動日中の活動の質(本人に合った活動・環境)そのものが行動の安定に直結する
  • 事業所選定では、強度行動障害支援者養成研修の受講状況、構造化・記録の実践状況、環境(個室・刺激の調整のしやすさ)を確認する。受け入れ実績だけでなく「どう支援しているか」を見る。

支援者側の要因 — 不適切な関わりが行動障害を作る

  • 行動障害は本人の中で完結する現象ではない。分からない指示・一方的な制止・叱責・力による対応・見通しのない待機といった不適切な関わりの蓄積が、行動障害を作り、悪化させる。
  • 行動を力で抑える対応は短期的に「効く」ように見えるため定着しやすいが、本人の不信と行動の激化を招き、身体拘束・虐待に地続きである。行動障害のある人は虐待の被害者になりやすいハイリスク層であることが知られている(→障害者虐待防止法)。
  • 「あの人は大変な人」という見方が事業所内で共有されると、関わりが管理的になり行動が悪化する悪循環に入る。行動が激しくなったときは、本人ではなく支援の側に何が起きているかを点検する。

相談支援専門員の視点

  • 計画の目標を「問題行動の減少」に置かない。本人に分かる環境・伝えられる手段・楽しめる活動が増えることを目標にし、行動の変化はその結果として捉える。
  • 対応の一貫性が生命線。家庭・日中活動・ホーム・ヘルパーで対応がバラバラだと本人が混乱する。サービス担当者会議で具体的な場面レベル(こだわりが出たときにどうするか)まで共有する。
  • 家族(特に長年一人で対応してきた親)の疲弊と孤立に目を向ける。レスパイトの確保は本人支援でもある。
  • 行動が激しい時期の緊急対応(短期入所の受け皿・医療との連携)を、落ち着いている平時に準備しておく。地域生活支援拠点等の緊急時対応機能の登録も確認する。

関連ページ

制度・要件は最新資料で確認

行動関連項目の基準点・対象要件・加算の内容は改定されることがある。最新の告示・自治体資料で確認すること。