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問題解決アプローチ
問題解決を援助者の仕事ではなく本人自身の営みと捉え、本人が問題に取り組む力——動機づけ・能力・機会(ワーカビリティ)——を高めることを援助の中心に置くアプローチ。「丸抱え支援からの脱却」の理論的根拠として、相談支援と特に相性がよい。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な提唱者 | ヘレン・ハリス・パールマン(H. H. Perlman) |
| 主著 | 『ソーシャル・ケースワーク——問題解決の過程』(1957) |
| 理論的基盤 | 自我心理学 + 役割理論。診断派を軸に機能派の長所を折衷 |
| 中心概念 | 4つのP、ワーカビリティ(MCO)、部分化 |
| 期間の性格 | 過程(プロセス)重視。長期・短期どちらにも適用可能 |
理論的背景
- パールマンは診断派の出身だが、機能派の「本人の主体性」「機関の機能」の視点を取り入れ、診断派・機能派論争を折衷した。この統合的性格から、後のジェネラリスト実践の先駆けとも位置づけられる。
- 人が生きることは問題解決の連続であり、援助が必要になるのは問題そのものが特別だからではなく、対処する力が一時的に損なわれているからだと考える。したがって援助の目標は問題の代行解決ではなく、対処能力の回復・向上にある。
中心概念
4つのP
ケースワークの構成要素を4つのPで整理した(のちに2つ追加され6つのPとも)。
| P | 内容 |
|---|---|
| 人(Person) | 問題に直面し、援助を求めて機関に来た人 |
| 問題(Problem) | 本人が対処を必要としている生活上の問題 |
| 場所(Place) | 援助が提供される機関・施設 |
| 過程(Process) | ワーカーと本人の関係を通じた問題解決の過程 |
| (専門家 Professional person) | のちに追加。援助を担う専門職 |
| (制度・施策 Provisions) | のちに追加。活用できる社会資源・制度 |
ワーカビリティ(workability)= MCO
本人が援助を活用して問題に取り組む力。3要素で評価し、不足している要素を高めることが援助の焦点になる。
| 要素 | 内容 | 低いときの現れ | 高める働きかけの例 |
|---|---|---|---|
| 動機づけ(Motivation) | 問題を解決したいという意欲 | 「どうせ無理」「別に困っていない」 | 小さな成功体験、本人の望みから話を始める |
| 能力(Capacity) | 問題に取り組む身体的・知的・情緒的な力 | 手続きが理解できない、感情が溢れて動けない | 情報をわかりやすく提示、課題の部分化、同行 |
| 機会(Opportunity) | 力を発揮できる場・資源・チャンス | 使える資源がない、家族が本人の挑戦を止める | 資源の紹介・開発、環境調整、家族への働きかけ |
「やる気がない人」と言う前に
動機づけ・能力・機会のどれが欠けているのかを腑分けすると、「本人のやる気の問題」で片づけていたケースの介入点が見える。機会(環境側)の不足を本人の動機の問題と誤認していることは非常に多い。
部分化(partialization)
問題の全体は大きくても、取り組める大きさに切り分けて一つずつ扱う技法。「全部は無理でも、ここからならできる」を本人と見つける。課題中心アプローチに受け継がれた発想。
援助の進め方
- 本人が問題をどう体験しているかを聞き、本人にとっての問題を明確にする。
- 問題を部分化し、着手する部分を本人と選ぶ。
- MCOをアセスメントし、不足する要素を高める働きかけを組み立てる。
- 本人が実際に問題解決の行動をとる過程に伴走し、経験を一緒に振り返る。
向いている場面
- 本人に問題へ取り組む力を育てたいとき。支援の「卒業」を見据えたいケース。
- 問題が山積して本人も支援者も圧倒されているとき(部分化が効く)。
- 「やる気がない」と評されている人のアセスメントを立て直したいとき(MCOの腑分け)。
向いていない場面・限界
- 急性の危機状態(→危機介入アプローチ)。本人の対処能力に働きかける余裕がない局面では、まず保護的介入が要る。
- 意思疎通・判断能力の制約が大きく、本人の問題解決行動を軸に組み立てにくいケースでは、意思決定支援・環境調整の比重を上げる。
- 「本人の力を高める」が支援の出し惜しみの口実になってはならない。必要な支援は提供した上で、本人の役割を残すのが本旨。
相談支援での活用
- 計画への「本人の役割」の組み込み: 手続き・交渉を相談員が代行しきらず、本人が窓口に電話する・見学を申し込むなどの役割をサービス等利用計画に明記し、遂行を支える。
- アセスメントの枠組み: 「なぜ進まないのか」をMCOで整理する。動機の問題か、理解・体力の問題か、資源・環境の問題かで、次の一手がまったく変わる。
- モニタリングでの振り返り: 本人がやってみた結果を「できた/できない」の判定でなく、問題解決の経験として一緒に振り返り、次の部分化につなげる。
相談支援専門員の視点
- 相談支援の理念(本人中心・エンパワメント)を面接の技術に落とすときの、最も実務的な足場がこのアプローチ。「代わりにやる」から「一緒にやる」へ、さらに「見守る」への移行を意図的に設計する。
- 部分化は計画の短期目標の書き方に直結する。「就労する」ではなく「見学を1か所申し込む」まで下ろす。
- 家族が本人の機会(O)を奪っているケース(過保護・先回り)では、本人でなく家族への働きかけが介入点になる。MCOは本人だけでなく環境も見る枠組みとして使う。
関連ページ
- 実践モデル・アプローチ(一覧) / 課題中心アプローチ / 解決志向アプローチ
- 基盤となる理論・視点(エンパワメント・ストレングス視点)
- 計画相談の流れ / モニタリング