Skip to content

質問技法

質問は情報を得る道具であると同時に、面接の方向を決めるハンドルである。何をどの順で問うかによって、同じ相手からでも引き出せるものが大きく変わる。質問の種類と使いどころを整理し、「質問攻め」にならない面接を設計する。

開かれた質問と閉じられた質問

種類特徴例文向く場面
開かれた質問自由に語ってもらう。情報量が多いが負荷も高い「最近の生活はいかがですか」「どんなことに困っていますか」面接の序盤、意向・価値観を知りたいとき
閉じられた質問はい/いいえや選択肢で答えられる。事実確認に強い「朝は一人で起きられますか」「通院は月1回ですか」事実確認、疲れているとき、言語表出が苦手な人
  • 開かれた質問で広げ、閉じられた質問で確かめるの往復が基本形。開かれた質問だけでは焦点が定まらず、閉じられた質問だけでは尋問になる。
  • 中間の形として選択肢を示す質問(「家で過ごすのと外に出るのと、どちらが好きですか」)がある。開かれた質問に答えにくい人への足場になる(→障害特性に応じた面接の配慮)。

「なぜ」質問の危うさと言い換え

「なぜ」は理由を問う中立的な言葉のつもりでも、責められている・詰問されている印象を与えやすい。また本人自身が理由を言語化できないことも多く、答えられない体験を強いる。

避けたい形言い換えの例
「なぜ通院をやめたんですか」「何かきっかけがあったんですか」「通院がしんどくなったのは、いつ頃からですか」
「なぜ行かなかったんですか」「行こうとしたとき、何がありましたか」「どんなことが引っかかりましたか」
「なぜそう思うんですか」「そう思うようになったのは、どんなことからですか」
  • 言い換えの型は「なぜ→何が・いつ・どんなとき」。理由(why)を状況(what/when/how)に置き換えると、責める響きが消え、本人も答えやすくなる。

焦点化の質問

話が広がった後、面接を深める方向に絞り込む質問。要約とセットで使う。

  • 「いくつかお話が出ましたが、いちばん困っているのはどれですか」(優先順位づけ)
  • 「その中で、まず何とかしたいことはどれですか」(着手点の特定)
  • 「『家事が大変』とのことですが、具体的にはどの家事ですか」(具体化)
  • 「それはいつ頃からですか」「どのくらいの頻度でありますか」(時間・頻度の特定)

焦点化はアセスメント様式に書ける具体度まで情報を精緻化する技術でもある。抽象的な困りごとのままでは計画のニーズに落ちない。

円環的質問

家族療法に由来する質問法。本人と環境(家族・関係者)の関係のパターンを、関係者の視点を借りて描き出す。

例文ねらい
他者の視点を問う「お母さんは、あなたの今の生活をどう見ていると思いますか」本人の目に映る家族の見立てを知る
関係の変化を問う「あなたが働き始めたら、家の中で何が変わると思いますか」変化が関係に与える影響を予測してもらう
違いを問う「お父さんとお母さんでは、どちらがより心配していますか」家族内の温度差・構造を把握する
  • 本人と家族の意向がずれているケースで、どちらの肩も持たずにずれを可視化できるのが強み。解決志向アプローチの「関係性の質問」と同系統の技法である(→解決志向アプローチ)。

質問攻めにしない構成

質問が連続すると面接は取り調べになる。質問の量ではなく配置を設計する。

  • 質問1に応答2: 質問の間に繰り返し・言い換え・反射を挟む。「質問→答え→応答(受けとめ)→次の質問」のリズムを作る(→応答技法)。
  • 質問の前置き: 侵襲的な話題は「差し支えなければ」「計画を作るうえで大事なことなので伺いますが」と目的を添える。答えない自由を保障する。
  • 連続質問をしない: 「いつから? 誰と? どこで?」と畳みかけない。一問ずつ、答えを受けとめてから次へ。
  • 様式の順番で聞かない: アセスメント様式の項目順の質問は尋問の典型。会話の流れで聴き、様式へは面接後に整理する(→アセスメント面接の組み立て)。

面接後に「質問の数」を数えてみる

逐語や録音で自分の面接を振り返ると、質問の連発に気づける。目安として、質問と質問の間に応答(受けとめ)が挟まれているかを確認する。質問を減らして応答を増やすと、むしろ相手が自発的に語る量は増えることが多い。

相談支援での活用

  • インテーク: 序盤は開かれた質問と傾聴で主訴を聴き、終盤に閉じられた質問で基本情報を確認する二部構成にすると、情報収集と関係づくりが両立する。
  • モニタリング: 「変わりないですか」(閉じられた質問)は「変わりない」で終わる。「前回から、生活で変わったことはどんなことですか」と開かれた質問で始める。
  • 意向の聞き取り: 「どんなサービスを使いたいですか」ではなく「どんな暮らしがしたいですか」。サービスを問うとサービスしか出てこない。生活を問い、サービスは支援者側で当てはめる。

相談支援専門員の視点

  • 質問技法の上達は「良い質問を増やす」ことより「不要な質問を減らす」ことから始まる。応答で深められる場面まで質問で埋めていないかを振り返る。
  • 誘導に迎合しやすい人(知的障害・気を遣う人)には、閉じられた質問の答えを鵜呑みにせず、別の形で聞き直して一貫性を確かめる。「はい」が続くときは質問の形を疑う。
  • 動機づけ面接では開かれた質問はOARSの筆頭に置かれる。行動変容がテーマの面接では動機づけ面接の枠組みごと使う。

関連ページ