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面接技法と関係構築
相談支援の質は面接の質で決まる。アセスメントも計画作成もモニタリングも、土台は本人・家族との面接である。ここでは相談支援専門員が日常的に使う面接技法を整理する。
ラポール形成の基本
ラポール(信頼関係)は初回面接の最初の数分から始まる。技法以前の基本姿勢として押さえる。
- 自己紹介と役割の説明: 自分が誰で、何のために来たのか、話した内容がどう扱われるか(守秘義務・情報共有の範囲)を最初に伝える。
- 本人に直接話しかける: 家族や支援者が同席していても、主語は本人。本人を飛ばして家族とだけ話さない。
- 評価しない・急がさない: 初回から問題点の指摘や助言に入らない。まず「話してよかった」と思える体験をつくる。
- 約束を守る: 次回訪問の日時・持ち帰った宿題への回答など、小さな約束の積み重ねが信頼になる。
傾聴の技法
| 技法 | ポイント |
|---|---|
| うなずき | 相手の話のリズムに合わせる。機械的な連発は逆効果 |
| 相づち | 「ええ」「そうでしたか」など短く。話の腰を折らない |
| 沈黙の活用 | 本人が考えている沈黙は待つ。埋めようと質問を重ねない |
| 姿勢・視線 | 相手に体を向け、自然な視線を保つ(後述のSOLER) |
沈黙は「間」であって「失敗」ではない
知的障害・精神障害のある人は、質問の理解と応答に時間がかかることが多い。沈黙を恐れて言い換えや別の質問を重ねると、かえって混乱させる。ひと呼吸置いて待つことが最も簡単で効果的な配慮になる。
応答技法
聴いたことをどう返すかで、面接は深まりも浅くもなる。代表的な応答技法と例文。
| 技法 | 内容 | 例文 |
|---|---|---|
| 繰り返し | 相手の言葉の要点をそのまま返す | 「夜、眠れないんですね」 |
| 言い換え | 相手の話を別の言葉で返し、理解を確認する | 「一人で外出するのは不安がある、ということですね」 |
| 感情の反射 | 言葉の背後にある感情を言葉にして返す | 「お母さんとしては、将来のことがとても心配なんですね」 |
| 要約 | 話のまとまりごとに整理して返す | 「ここまでのお話をまとめると、仕事は続けたい、でも通勤がつらい、ということでしょうか」 |
| 明確化 | 曖昧な点を確かめる | 「『しんどい』というのは、体のことですか、気持ちのことですか」 |
質問技法
開かれた質問と閉じられた質問
| 種類 | 特徴 | 例文 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 開かれた質問 | 自由に語ってもらう。情報量が多い | 「最近の生活はいかがですか」「どんなことに困っていますか」 | 面接の序盤、本人の意向・価値観を知りたいとき |
| 閉じられた質問 | はい/いいえや選択肢で答えられる。事実確認に強い | 「朝は一人で起きられますか」「通院は月1回ですか」 | 事実の確認、疲れているとき、言語表出が苦手な人 |
- 開かれた質問だけでは焦点が定まらず、閉じられた質問だけでは尋問になる。開かれた質問で広げ、閉じられた質問で確かめるを往復する。
- 「なぜ」で始まる質問は責められている印象を与えやすい。「何がきっかけで」「どんなときに」に言い換える。
動機づけ面接の基本
行動変容への迷い(両価性)がある人との面接で有効なアプローチ。相談支援では、サービス利用をためらう人・受診や服薬に消極的な人・生活習慣の課題がある人との面接で応用できる。
OARS
| 頭文字 | 技法 | 内容 |
|---|---|---|
| O | 開かれた質問 (Open Question) | 本人の考え・価値観を引き出す |
| A | 是認 (Affirming) | 本人の強み・努力・意図を言葉にして認める |
| R | 聞き返し (Reflecting) | 相手の発言を反射して返し、深める |
| S | 要約 (Summarizing) | 語られたことを整理して返し、次へつなぐ |
チェンジトークと維持トーク
- チェンジトーク: 変わりたい方向の発言(「このままじゃまずいとは思う」「働けたらいいな」)。これを拾って聞き返し、深める。
- 維持トーク: 現状維持の方向の発言(「どうせ無理」「今のままでいい」)。否定せず受け止めるが、あえて掘り下げない。
- 間違い指摘反射(正したい反射)を避ける: 「でも、それは違いますよ」「〜すべきです」と正したくなる衝動を抑える。説得は抵抗を強め、維持トークを増やす。本人の口から変化の理由が語られるように面接を組み立てる。
非言語コミュニケーション
言葉以外のメッセージは本人に強く伝わる。基本姿勢の枠組みとしてSOLERが知られる。
| 頭文字 | 内容 |
|---|---|
| S (Squarely) | 相手とまっすぐ向き合う(真正面が圧迫になる人には斜めの位置取りも) |
| O (Open) | 腕組みをしない、開いた姿勢 |
| L (Lean) | やや相手に身体を傾ける |
| E (Eye contact) | 適度な視線を合わせる(凝視しない) |
| R (Relaxed) | リラックスした自然な態度 |
座る位置(正面/90度/横並び)、距離、声のトーン・速さも意識する。訪問面接では相手の生活空間に入る側であることを忘れず、上座に座らない・勝手に物に触れないなどの礼節も非言語メッセージの一部である。
アセスメント面接の組み立て
インテークからアセスメントまでの位置づけは計画相談の流れを参照。ここでは面接としての組み立てを整理する。
初回面接(インテーク)の枠組み
- 導入: 自己紹介・訪問の目的・所要時間の目安・守秘義務の説明
- 主訴の把握: まず本人・家族が話したいことを聴く(様式の項目埋めから入らない)
- 情報収集: 主訴に関連する事実を確認しながら広げる
- 整理と合意: 聴き取った内容を要約して返し、今後の進め方(次回日程・必要書類)を合意する
インテーク時の主な情報収集項目
| 領域 | 主な項目 |
|---|---|
| 基本情報 | 氏名・住所・家族構成・緊急連絡先・手帳・受給者証の有無 |
| 心身の状況 | 障害・疾病の状況、通院先・服薬、ADL/IADL |
| 生活状況 | 一日の過ごし方、住環境、経済状況(制度利用の有無) |
| 社会関係 | 家族・友人・近隣との関係、利用中のサービス・関係機関 |
| 本人の意向 | 望む暮らし、やりたいこと、困りごとの優先順位 |
| 生活歴 | 生育歴・教育歴・職歴・サービス利用歴(初回で無理に全部聴かない) |
様式を埋める面接にしない
アセスメント様式の項目を上から順に質問すると尋問になり、ラポールを壊す。会話の流れで聴き、面接後に様式へ整理するのが基本。生活歴などの侵襲性が高い項目は、関係ができてから複数回に分けて聴く。
障害特性に応じた面接の配慮
一般論として押さえ、詳細は障害理解の各ページを参照する。
| 障害 | 配慮のポイント | 詳細 |
|---|---|---|
| 知的障害 | 平易な言葉・短い文で。抽象的な質問は具体例に置き換える(「困っていることは?」→「朝ごはんは自分で用意しますか」)。誘導に迎合しやすい点に注意 | 知的障害の理解 |
| 精神障害 | 疲労に配慮し面接時間を短めに。調子の波を前提に、体調の悪い日は無理に進めない | 精神障害の理解 |
| 発達障害 | 曖昧な表現・比喩を避け、具体的・視覚的に伝える。「だいたい」「なるべく早く」ではなく日時・数字で示す | 発達障害の理解 |
| 聴覚障害 | 筆談・手話・音声認識アプリ等、本人の希望する手段を確認する。口話の場合は正面からゆっくり話す | 身体障害の理解 |
| 高次脳機能障害 | 記憶・注意の障害を前提に、メモや復唱で確認。1回の面接に情報を詰め込まない | 高次脳機能障害の理解 |
記録の書き方
面接は記録して完結する。記録は支援の継続性・多職種連携・監査対応・本人への説明責任の基盤になる。
- 客観的事実と解釈を区別する: 「本人が『眠れない』と述べた」(事実)と「不眠があり抑うつ的と思われる」(解釈)を書き分ける。解釈を書く場合は根拠となる事実を併記する。
- 本人の言葉はかぎかっこで残す: 意向の記録は要約より原文に近い形が強い。意思決定支援の記録としても重要(権利擁護と意思決定支援参照)。
- 枠組みを使う: 医療・介護分野で使われるSOAP(S: 主観的情報/O: 客観的情報/A: アセスメント/P: 計画)などの枠組みは、事実と解釈の区別を構造的に担保できる。事業所の記録様式に応じて援用する。
- 開示を前提に書く: 記録は本人・家族から開示請求されうる。読まれて困る表現(決めつけ・陰性感情)は書かない。
相談支援専門員の視点
- 面接技法は座学だけでは身につかない。自分の面接を逐語で振り返る、同僚の同行訪問で観察し合うなど、事業所内のOJT・スーパービジョンに組み込む。
- 計画相談は訪問・面接が運営基準の要(訪問によらない計画作成は減算対象)。面接の質はそのままサービス等利用計画の質になる。
- モニタリング面接は「変化を聴く面接」。前回計画の目標を共有した上で、開かれた質問で生活の変化を聴き、閉じられた質問で利用状況を確認する(モニタリング)。
- 本人の意向を引き出す面接技術は、意思決定支援の中核スキルでもある。権利擁護と意思決定支援とあわせて押さえる。