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発達障害者支援法の定義
発達障害者支援法(2005年施行)は、それまで身体・知的・精神のいずれの法制度からもこぼれ落ちやすかった発達障害を、初めて法律上に位置づけた。相談支援では「法律上の定義」「医学的診断名」「手帳制度」がそれぞれ別の体系であることを理解しておくと、対象性の判断や説明で迷わない。
法律上の定義
発達障害者支援法第2条は、発達障害を次のように定義する。
自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの
定義のポイントは3つある。
| ポイント | 意味 |
|---|---|
| 脳機能の障害 | 育て方・本人の性格・怠けの問題ではないことを法律が明示した |
| 通常低年齢において発現 | 生来的な特性であることを示す。ただし「低年齢で診断される」とは限らない(→大人の発達障害) |
| 例示列挙 | 「その他これに類する」を含むため、政令・省令でトゥレット症候群(チック)・吃音等も対象に含まれると整理されている |
「発達障害者」の定義と社会モデル(平成28年改正)
同法は「発達障害者」を次のように定義する。
発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの
- 「社会的障壁」の文言は平成28年(2016年)改正で加えられた。障害による制限は本人の特性だけでなく、社会の側の障壁(事物・制度・慣行・観念)との相互作用で生じるという社会モデルの考え方を反映している。
- 同改正では、切れ目のない支援、教育・就労・司法手続における配慮、家族支援なども強化された。
- 「診断名がある=発達障害者」ではなく、「特性と障壁により生活に制限を受けている」ことが支援対象の要件である点は、アセスメントの視点そのものと重なる。
医学的診断名との関係
法律の用語は制定当時の診断分類(ICD-10・DSM-IV世代)に基づいており、現在の診断分類とはずれがある。
| 法律上の用語 | 現在の主な診断名(DSM-5の神経発達症群) |
|---|---|
| 自閉症・アスペルガー症候群・広汎性発達障害 | 自閉スペクトラム症(ASD) に統合 |
| 注意欠陥多動性障害 | 注意欠如多動症(ADHD) |
| 学習障害(LD) | 限局性学習症(SLD) |
| (これに類する脳機能の障害) | 発達性協調運動症(DCD)、チック症群、吃音 等 |
- DSM-5では上記が「神経発達症群」として一つの大分類にまとめられ、併存が多いことを前提とした診断が可能になった。
- 記録や説明では、本人・家族が受けた診断名と、制度上の用語が食い違って見えることがある。「呼び方が変わっただけで対象から外れるわけではない」と説明できるとよい。
総合支援法・手帳制度との関係
| 制度 | 発達障害の位置づけ |
|---|---|
| 障害者総合支援法 | 発達障害は精神障害に含まれるものとして対象(2010年整理)。障害福祉サービスを利用できる |
| 児童福祉法 | 障害児支援(児童発達支援・放課後等デイサービス等)の対象 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 発達障害で取得可能(→精神障害の手帳・医療費助成) |
| 療育手帳 | 知的障害を伴う場合に対象(→療育手帳制度) |
手帳がなくてもサービスは使える
障害福祉サービス・障害児支援の利用に手帳は必須ではなく、医師の診断書・意見書等で対象性が認められる。「手帳を取ってからでないと相談できない」と思い込んでいる本人・家族は多く、この誤解を解くだけで支援が一歩進むことがある。手帳の要否は、税制・手当・雇用率算入など手帳固有のメリットが必要かどうかで別途検討する。
相談支援での活用
- 対象性の説明: 「発達障害は総合支援法・児童福祉法の対象」「手帳は必須でない」という2点を、根拠(法の定義)とともに説明できるようにしておく。
- 社会モデルの反映: 計画の課題整理で「本人の特性」と「環境側の障壁」を分けて記述すると、平成28年改正の趣旨(社会的障壁の除去)に沿った支援目標が立てやすい。
- 診断名の読み替え: 過去の診断書に「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」とある場合も現在のASDに相当するものとして読み、支給決定等の場面で説明を補う。
相談支援専門員の視点
- 定義を知る実務上の意味は「対象かどうかの線引き」よりも、制度の谷間に落とさないことにある。診断が確定していない・手帳がない段階でも、生活の制限があれば相談支援は始められる。
- 「発達障害及び社会的障壁により制限を受ける」という定義は、支援の焦点が本人の矯正ではなく環境調整にあることの法的な裏づけでもある。家族や関係機関への説明に使える。
- 法律用語(注意欠陥多動性障害等)は本人・家族の前で使うと否定的な響きを持つことがある。面接では現在の診断名や本人が使っている呼び方に合わせる。
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制度内容の確認
法律・制度の内容は改正されることがある。実務での判断にあたっては、最新の法令・通知・自治体資料で確認すること。