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発達障害の理解

発達障害のある人(児)の相談支援に必要な基礎知識を整理する。特性の理解を出発点に、環境調整を軸とした支援の組み立て方を押さえる。

発達障害者支援法の定義

  • 発達障害者支援法(2005年施行)は、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義する。
  • 現在の診断分類では自閉スペクトラム症(ASD)・注意欠如多動症(ADHD)・限局性学習症(SLD)等として整理される。法律用語と診断名が併存している点に留意。
  • 発達障害は障害者総合支援法・児童福祉法のサービス対象であり、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳がなくても医師の診断等により対象性が認められる。

主な障害の特性

自閉スペクトラム症(ASD)

観点内容
社会的コミュニケーション暗黙のルール・比喩・場の空気の理解が困難。字義通りの受け取り。視線・表情の読み取りの苦手さ
こだわり・常同性特定の手順・配置・興味への強い執着。予定変更への強い不安。反復的な行動
感覚の特性感覚過敏(音・光・触感・匂い)と感覚鈍麻(痛み・温度に気づきにくい)が併存しうる
  • 特性は「スペクトラム(連続体)」であり、知的障害を伴う人から伴わない人まで幅広い。
  • パニックや自傷・他害の背景に感覚過敏や見通しの持てなさがあることが多い。行動だけを見て「問題行動」と切り取らない。

注意欠如多動症(ADHD)

観点内容
不注意忘れ物・紛失、締切管理の困難、作業中の注意逸れ、片付けの苦手さ
多動性じっとしていられない、離席、しゃべりすぎ(成人では内的な落ち着かなさとして現れることが多い)
衝動性順番を待てない、考える前に行動・発言、金銭の衝動的な使用
  • 背景に実行機能(計画・段取り・優先順位づけ・感情のコントロール)の困難がある。「やる気の問題」ではない。
  • 支援は環境調整(リマインダー・チェックリスト・作業の細分化)が基本。薬物療法の要否は医療機関の判断。

学習障害(LD)・限局性学習症

  • 全般的な知的発達に遅れはないのに、読み・書き・算数など特定の学習領域に著しい困難がある状態。
  • 読みの困難(文字が歪む・行を飛ばす)、書きの困難(鏡文字・板書が写せない)、算数の困難(数概念・筆算)など現れ方は多様。
  • 努力不足と誤解されて自己評価が下がりやすい。ICT活用(音声読み上げ・タブレット入力)等の代替手段の保障が支援の柱。

発達性協調運動症(DCD)

  • 極端な不器用さ(ボタンかけ・ハサミ・書字・球技等の困難)を特徴とする。ASD・ADHDに併存することが多く、生活動作や就労での困難につながるため見落とさない。

大人の発達障害

  • 幼少期に診断されず、就労・一人暮らし・対人関係のつまずきをきっかけに成人期に相談・診断に至るケースが増えている。
  • 長年の失敗体験・叱責の積み重ねから、二次障害としてうつ・不安症・ひきこもり等を併存していることが多い。表面に出ている精神症状の背景に発達特性がないかという視点を持つ(精神障害の理解参照)。
  • 本人が特性を自覚していない・障害受容の途上である場合、診断や手帳の話を急がず、困りごとベースで関係を作る。

「本人を変える」より「環境を変える」

発達障害支援の基本は特性の矯正ではなく環境調整である。本人の努力を求める前に、伝え方・場の構造・感覚環境を変えられないかをまず検討する。この視点はサービス等利用計画の支援目標の立て方にも直結する。

知的障害との併存

  • 発達障害は知的障害を伴う場合と伴わない場合がある。知的障害を伴う場合は療育手帳の対象となり、支援の組み立ても変わる。知的障害の理解を参照。
  • 知的障害を伴わない場合でも、実行機能・感覚・対人面の困難により生活のしづらさは大きい。「話せる・学歴がある=支援不要」ではない。

支援の基本

手法内容
構造化場所・時間・活動の対応関係を明確にする(この場所ではこの活動、という一貫性)
視覚支援口頭指示だけでなく、絵カード・写真・スケジュール表・手順書で示す
見通しの提示予定・変更・終わりの時間を事前に伝える。「いつ終わるか」が分かるだけで安定することが多い
具体的で肯定的な指示「ちゃんとして」ではなく「椅子に座って待つ」。禁止形より「〜する」で伝える
感覚環境の調整騒音・照明・席の位置の配慮、イヤーマフ・パーテーション等の活用
  • スモールステップと成功体験の積み重ねが自己肯定感を守る。できたことを具体的に伝える。

家族支援・地域資源

  • ペアレントトレーニング: 保護者が特性理解と肯定的な関わり方(ほめ方・指示の出し方)を学ぶプログラム。市町村・発達障害者支援センター・医療機関等で実施される。
  • 発達障害者支援センター: 発達障害児者への支援を総合的に行う専門機関(相談・普及啓発・機関支援)。都道府県・政令市に設置。困難ケースの助言元として把握しておく。
  • ペアレントメンター(先輩保護者による相談)や親の会も有力な資源。地域の実情は地域情報に整理する。

相談支援専門員の視点

  • アセスメントでは「何ができないか」だけでなく、どういう条件なら力を発揮できるか(得意な情報の受け取り方・落ち着ける環境・興味関心)をストレングスとして把握する。生育歴・学校での配慮の経過も重要な情報源。
  • 計画作成では、支援目標を具体的な行動レベルで書く(「社会性を身につける」ではなく「週1回の通所を継続する」)。特性への配慮事項を計画に明記し、支援チーム全体で対応を統一する。
  • サービス選定の例: 子どもは児童発達支援放課後等デイサービス、就労希望には就労移行支援就労選択支援、生活面の自立には自立訓練(生活訓練)を検討。強度行動障害がある場合は行動援護・重度障害者支援加算の体制がある事業所か確認する。
  • 学齢期は学校(特別支援教育・合理的配慮)との連携、卒業前後は進路移行の引き継ぎが焦点になる。ライフステージの節目で支援が途切れないよう、移行期こそ相談支援が要となる。

関連ページ

本ページの位置づけ

本ページは支援者向けの概説であり、診断・治療の判断は医療機関が行う。特性の評価・服薬等の個別のケースは、必ず主治医・医療機関(児は児童精神科・発達外来等)に確認すること。