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高次脳機能障害と手帳
高次脳機能障害には専用の手帳制度がない。症状の内容に応じて精神障害者保健福祉手帳と身体障害者手帳を使い分ける(併用もありうる)ことになり、この整理が相談支援の実務知識として重要である。同時に、手帳がなくても障害福祉サービスの対象になりうることを押さえておく。
症状と手帳の対応関係
| 状態 | 対応する手帳 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害 | 精神障害者保健福祉手帳 | 器質性精神障害として対象になりうる |
| 失語症 | 身体障害者手帳 | 音声・言語機能障害の枠(→音声・言語・そしゃく機能障害) |
| 片麻痺等の運動障害を伴う場合 | 身体障害者手帳 | 肢体不自由の枠(→肢体不自由) |
| 視野障害等を伴う場合 | 身体障害者手帳 | 視覚障害の枠 |
- 「高次脳機能障害なのに精神の手帳?」という戸惑いは本人・家族に非常に多い。精神障害者保健福祉手帳の対象には脳の器質的損傷による精神機能の障害(器質性精神障害)が含まれるためであり、統合失調症等の精神疾患と同じ病気という意味ではない、という説明が納得の鍵になる。
- 失語症と認知障害が併存する場合など、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳の両方に該当しうるケースがある。それぞれで受けられるサービス・割引・雇用上の扱いが異なるため、両方の該当性を整理して案内する。
手帳取得の実務
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 診断書の作成者 | 精神障害者保健福祉手帳は所定の診断書を医師が作成する。高次脳機能障害の診療経験のある医療機関だと生活実態が反映されやすい |
| 初診日からの期間 | 精神障害者保健福祉手帳は、初診日から一定期間(6か月)経過後に申請可能とされている(最新の運用は自治体で確認) |
| 初診日の特定 | 高次脳機能障害の場合、原因となった事故・疾病での受診が起点になるのが一般的。救急搬送先・急性期病院の受診記録が重要 |
| 更新 | 精神障害者保健福祉手帳には有効期限があり更新が必要。更新時期の管理を支援に組み込む |
| 障害年金との関係 | 初診日は障害年金でも核になる情報。手帳申請の段階で初診日の証拠(受診状況等証明書等)を整理しておくと、年金申請時に活きる |
- 診断書には検査結果だけでなく生活能力の状況が記載される。家族から聞き取った生活場面の困りごとを受診時に医師へ伝えられるよう、メモの持参を勧めるとよい。
- 手帳制度の全体像(3種類の手帳・取得のメリット)は障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳の等級・医療費助成は精神障害の手帳・医療費助成を参照。
手帳がなくてもサービス利用の対象になりうる
- 障害福祉サービスの利用に手帳は必須ではない。高次脳機能障害の場合、医師の診断があれば(精神障害者としての位置づけで)サービスの支給申請が可能である。
- したがって「手帳を取ってからサービス」という順序に固定する必要はない。サービス利用を先行させ、手帳は初診日からの期間経過や本人の心理的準備を待って申請する、という組み立てができる。
- 一方、障害者雇用(雇用率制度の対象)・各種割引・税の控除など手帳がなければ使えない仕組みもある。就労を目指す場合は手帳の有無が選択肢の幅に直結するため、時期を見て取得の意義を説明する。
手帳の提案は「使い道」とセットで
病識が乏しい人・障害受容の途上にある人に手帳だけを勧めると、「障害者にされる」という反発を招きやすい。「障害者雇用の枠で仕事を探せる」「交通費が安くなる」など、本人の目標に結びつく具体的な使い道が見えてから提案するほうが受け入れられやすい。取得を急がせないこと自体が支援である。
相談支援での活用
- 初回相談の段階で、①原因疾患・受傷の時期、②初診の医療機関、③現在の手帳の有無、④障害年金・自動車保険・労災等の補償の状況をセットで確認すると、その後の制度活用の見取り図が描ける。
- 支給決定の手続き・サービス等利用計画との関係は支給決定を参照。手帳未取得のケースでは、市町村への申請時に診断書等の資料が必要になるため、事前に窓口へ確認する。
- 失語症が主症状の人は、身体障害者手帳(音声・言語)の枠での補装具・日常生活用具や、意思疎通支援の資源も視野に入る。
相談支援専門員の視点
- 手帳の説明は本人の自己理解の段階に合わせる。診断・手帳・サービスの制度的整理を一度に説明しても、記憶障害があれば残らない。書面にして渡し、複数回に分けて繰り返す。
- 「精神の手帳」への抵抗が強い場合、無理に説得しない。手帳がなくてもできる支援から始め、必要性が本人に見えたタイミングで再提案する。
- 更新忘れは記憶障害のある人に起こりやすい。有効期限を計画・モニタリングの確認項目に入れ、家族・支援チームで共有しておく。
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最新の運用を確認する
手帳の申請要件・診断書様式・自治体の運用は変わることがある。実務では最新の自治体資料・窓口(地域情報)で確認すること。