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法律上の障害者の定義
「障害者」の定義は法律ごとに異なり、どの法律の定義に当てはまるかで使える制度が変わる。理念法(基本法)・サービス法(総合支援法・児童福祉法)の定義の違い、難病等が対象に加わった経緯、「制度の谷間」問題、手帳との関係を整理する。
主要3法の定義
| 法律 | 性格 | 定義の要点 |
|---|---|---|
| 障害者基本法 | 理念法(施策全体の基本) | 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活・社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの |
| 障害者総合支援法 | サービス法(給付の対象) | 身体障害者・知的障害者・精神障害者(発達障害者を含む)に加え、難病等(治療方法が確立していない疾病等で政令で定めるもの)による障害がある者。18歳以上を「障害者」とする |
| 児童福祉法 | サービス法(障害児支援) | 18歳未満の「障害児」: 身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害児を含む)、難病等の児童 |
読み方のポイント
- 基本法は社会モデル: 「その他の心身の機能の障害」と包括的に書き、さらに「社会的障壁により…制限を受ける状態」を要件とする。障害を個人の属性ではなく社会との相互作用で捉える社会モデルが定義に組み込まれている(2011年改正)。社会的障壁は事物・制度・慣行・観念と定義される。
- サービス法は対象を列挙: 給付の対象を確定する必要があるため、総合支援法・児童福祉法は障害種別と難病等を列挙する形をとる。基本法より対象の外延が明確な分、列挙から漏れる人が生じうる構造を持つ。
- 年齢で法体系が分かれる: 18歳未満は児童福祉法の障害児支援(障害児支援)が基本。18歳到達前後で根拠法とサービスが切り替わるため、移行期の引き継ぎが実務上の要所になる。
- 各障害の個別法(身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・精神保健福祉法・発達障害者支援法)にもそれぞれ定義があり、手帳制度や福祉の措置の根拠になっている。
難病等の対象化の経緯
- かつて難病のある人は、症状の変動などで身体障害者手帳の基準に該当しない場合、障害福祉サービスの対象から漏れていた。
- 2013年施行の障害者総合支援法(自立支援法からの改正)で、難病等が障害者の定義に追加され、手帳がなくても対象疾病の診断があればサービスを申請できるようになった。
- 対象疾病は政令・告示で定められ、追加・見直しが繰り返されているため、該当の可否は必ず最新の対象疾病一覧で確認する。難病法(難病医療費助成)の指定難病とは制度も対象範囲も別である点に注意。
詳細は 難病と障害福祉サービス を参照。
「制度の谷間」問題
対象を列挙する定義の構造上、どの制度の対象にも当てはまりにくい人が生じてきた。これが「制度の谷間」と呼ばれる問題である。
- 典型例として、発達障害(発達障害者支援法制定・精神障害への位置づけ明確化まで)、高次脳機能障害(器質性精神障害として整理されるまで)、手帳基準に満たない難病・慢性疾患などが谷間に置かれてきた。
- 谷間を埋める方向で、発達障害者支援法(2004年)、障害者基本法の包括的定義(2011年)、総合支援法での難病等の追加(2013年)と制度は拡張されてきたが、依然として境界的なケースは残る(対象疾病に入らない疾患、診断が確定しない状態像など)。
- 実務では「定義に当てはまらない=支援できない」と即断せず、どの法体系(障害・難病・介護保険・生活困窮・医療)なら入口になるかを横断的に検討する。
手帳の有無と法律上の障害者
手帳の所持と法律上の障害者であることは同じではない。
| 場面 | 手帳の要否 |
|---|---|
| 総合支援法のサービス申請 | 手帳は必須ではない。医師の診断書・意見書等で障害の存在が確認できれば申請できる(難病等は対象疾病の診断で対象) |
| 身体障害者福祉法上の「身体障害者」 | 手帳の交付を受けた者と定義されており、手帳が要件 |
| 税控除・運賃割引・雇用率カウント等 | 多くは手帳が要件・根拠 |
- 障害児のサービス(児童福祉法)も手帳必須ではなく、医師の意見書等で利用につながるのが一般的。
- 手帳制度の詳細は 障害者手帳 を参照。
サービス利用の入口(支給決定)との関係
- 法律上の対象に当てはまることは入口の要件であり、実際にサービスを使うには市町村への申請と支給決定(障害児は通所給付決定等)が必要になる。
- 支給決定では、障害支援区分の認定(介護給付の場合)、勘案事項の調査、サービス等利用計画案の提出を経て、支給量が決定される。「対象かどうか」と「どのサービスがどれだけ支給されるか」は別の判断である。
- 相談の初期段階では、①どの法律の対象に当たりうるか(入口の整理)、②確認資料は何か(手帳・診断書・意見書)、③どの窓口に申請するか、の順で整理すると混乱しない。
支給決定の流れは 支給決定・障害支援区分 を参照。
「対象外」と言われたときの点検
窓口で「対象外」とされた場合、どの法律・どの要件で対象外なのかを確認する。基本法レベルでは障害者に当たる人が、サービス法の要件(対象疾病・年齢・区分)で外れているだけなら、別の制度(自立支援医療、難病施策、介護保険、地域生活支援事業等)が入口になる可能性がある。
相談支援専門員の視点
- 定義は「ふるい落とすための知識」ではなく「入口を見つけるための知識」として使う。本人の状態像から複数の法体系を並べ、使える可能性のある制度を広く挙げるのが相談支援の役割。
- 障害の確認資料(診断書・意見書)の取得には受診・費用・心理的ハードルが伴う。何のためにどの書類が必要かを本人に説明できることが、申請支援の質を左右する。
- 18歳・65歳など法体系の境目(児童福祉法→総合支援法、総合支援法→介護保険優先)は支援が途切れやすい。境目が近いケースは早めに次の制度の入口を調べておく。
関連ページ
制度・法令の確認
定義・対象疾病・支給決定の運用は法改正・告示改正で変わる。必ず最新の法令・告示・自治体資料で確認すること。