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難病・重症心身障害・医療的ケアの理解

医療ニーズの高い人(児)の相談支援に必要な基礎知識を整理する。難病患者の制度上の位置づけ、重症心身障害の理解、医療的ケアの種類と支援体制を押さえる。

難病と障害福祉サービス

障害者総合支援法の対象難病

  • 障害者総合支援法は、身体・知的・精神障害に加えて一定の難病等の患者を「障害者」の定義に含めている。
  • 対象疾病に該当すれば、身体障害者手帳がなくても、必要と認められた障害福祉サービス(障害支援区分の認定を経て介護給付・訓練等給付等)を利用できる。
  • 対象疾病は追加・見直しが行われ数が変動するため、厚生労働省の最新の対象疾病一覧で必ず確認する。難病法の指定難病と総合支援法の対象疾病は範囲が完全には一致しない点にも注意。

指定難病医療費助成(難病法)

  • 難病法に基づき、指定難病と診断され重症度基準等を満たす場合に、医療費の自己負担が軽減される(原則2割負担+所得に応じた月額上限)。
  • 申請窓口は保健所等。指定医の診断書(臨床調査個人票)が必要で、受給者証は定期更新制。
  • 医療費助成(難病法)とサービス利用(総合支援法)は別制度・別手続き。両方の該当性をそれぞれ確認する。窓口の実情は地域情報に整理する。

難病の特性

特性支援上の意味
進行性現時点の能力ではなく先の変化を見越した計画が必要。福祉用具・住環境整備は先手で
症状の変動日内・日間で状態が変わる。「調子の良い日」を基準に支援量を決めない
見えにくい疲労・痛み外見から分からない倦怠感・疼痛がある。就労や家事の「できるけど続かない」に着目
医療との強い結びつき治療スケジュール(通院・入院)と生活支援の両立が課題になる

障害支援区分の認定調査で伝えるべきこと

難病は「できたりできなかったりする」状態が正しく評価されにくい。認定調査の場面では、最も悪い状態・頻度・介助の実態を具体的に伝えるよう本人・家族に助言する。特記事項に症状の変動を書いてもらうことが適切な区分認定につながる。

重症心身障害

  • 重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した状態を重症心身障害という(児童福祉法上は重症心身障害児)。医学的診断名ではなく、支援・行政施策上の概念。
  • 分類には大島分類(運動機能と知能指数の2軸のマトリクスで整理する方法)が広く用いられてきた。詳細な判定は医療機関・行政資料で確認する。
  • 姿勢の保持・移動・食事・排泄・意思表出の全般に支援を要し、てんかんや呼吸・摂食の障害を伴うことが多い。医療的ケアを要する場合も多い。
  • 表出が微細でも、表情・視線・筋緊張の変化などで快・不快や意思を伝えている。本人なりの意思表出を読み取る姿勢が支援の出発点であり、日常的に関わる家族・支援者の「読み」を計画に反映する。
  • 主なサービス: 児は児童発達支援(主に重症心身障害児を通わせる事業所の類型がある)、成人は生活介護や、医療と機能訓練を要する場合の療養介護

医療的ケア児・者

医療的ケアの種類

家族等が日常的に行っている医行為を「医療的ケア」と呼ぶ。主なものを整理する。

ケア内容
人工呼吸器呼吸機能の低下を補う。気管切開を伴う場合と非侵襲的(マスク)換気がある。停電・故障時対応が必須
気管切開の管理気管カニューレの管理。カニューレ抜去時の緊急対応の共有が必要
喀痰吸引口腔・鼻腔・気管カニューレ内の痰の吸引
経管栄養胃ろう・腸ろう・経鼻経管による栄養注入
導尿カテーテルによる排尿の介助
在宅酸素療法酸素濃縮器・ボンベによる酸素投与
血糖管理・インスリン注射測定・注射の介助(実施主体に注意)
  • 歩ける医療的ケア児(運動機能は保たれているが人工呼吸器等を使用)もおり、重症心身障害とイコールではない

医療的ケア児支援法(2021年施行)

  • 医療的ケア児とその家族への支援を国・自治体の責務とし、保育所・学校等における支援体制の整備を求めた法律。
  • 各都道府県に医療的ケア児支援センターが設置され、家族等からの相談対応・関係機関への情報提供・研修を担う。地域の相談先として押さえておく。

誰がケアを実施できるか(喀痰吸引等研修)

  • 医行為は原則として医療職(医師・看護師等)が行うが、喀痰吸引等研修を修了した介護職員等は、一定の研修・登録のもとで喀痰吸引・経管栄養を実施できる(認定特定行為業務従事者)。
  • ヘルパー・通所・短期入所の受け入れ可否は、看護職員の配置や研修修了者の有無に左右される。事業所調整では対応可能な医療的ケアの範囲を必ず具体的に確認する。

在宅生活を支える資源

  • 訪問看護: 医療保険等による在宅医療の柱。医療的ケアの実施・家族への手技指導・体調管理を担い、相談支援にとって最重要の連携先。
  • レスパイト(家族の休息): 家族が唯一のケア担い手になっている世帯では、レスパイトの確保自体が計画の中心課題になる。短期入所(医療型短期入所を含む)、療養介護、通所系サービスを組み合わせる。
  • 外出が困難な児には、居宅を訪問して発達支援を行う居宅訪問型児童発達支援がある。
  • 相談支援側の体制としては要医療児者支援体制加算・医療・保育・教育機関等連携加算等がある(相談支援の報酬・加算参照)。

災害時の備え

  • 停電対策: 人工呼吸器・吸引器・酸素濃縮器は電源が生命線。予備バッテリー・発電機・車のシガーソケット等の確保状況、自治体の非常用電源貸与・補助の有無を確認する。
  • 個別避難計画: 避難行動要支援者名簿への登録と、市町村による個別避難計画の作成対象になりうる。福祉避難所の指定状況・一般避難所での医療的ケア対応可否を平時に確認しておく。
  • 災害時の連絡先・避難先・必要物品(薬・カニューレ予備・栄養剤等)のリストを本人・家族・支援チームで共有する。サービス等利用計画やモニタリングの確認項目に組み込む。

災害対策は「計画に書いて終わり」にしない

停電・災害時の対応はモニタリングのたびに更新する生きた情報として扱う。バッテリーの劣化、支援者の交代、避難先の変更など、前提は常に変わる。年1回は本人・家族と避難手順を具体的に確認したい。

相談支援専門員の視点

  • アセスメントでは、医療的ケアの種類・頻度・実施者、主治医・訪問看護の体制、家族(特に主介護者)の健康と睡眠を必ず把握する。きょうだい児への影響(ヤングケアラー)にも目を配る。
  • 計画作成では医療と福祉の情報を一枚につなぐ役割を意識する。サービス担当者会議に訪問看護・医療機関(可能なら)を招き、緊急時対応・災害時対応を共有する。
  • サービス選定では、受け入れ実績・看護体制・送迎中の医療的ケア対応まで具体的に確認する。「医療的ケア対応可」の表記だけで判断しない。
  • 進行性難病では、告知・病状進行に伴う本人・家族の心理的揺れに寄り添いながら、制度(手帳・年金・介護保険との関係を含む)を段階的に案内する。65歳以上・特定疾病該当者は介護保険優先の整理も必要。

関連ページ

本ページの位置づけ

本ページは支援者向けの概説であり、診断・治療・医療的ケアの手技の判断は医療機関が行う。対象疾病・医療費助成の該当性や個別のケアの内容は、必ず主治医・医療機関・保健所等に確認すること。