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精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(にも包括)

「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」(通称: にも包括)は、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らせる地域づくりを目指す政策理念である。個別支援の積み重ねを地域の体制づくりにつなぐ回路として、相談支援事業所も当事者の一員に位置づけられる。

背景 — 入院医療中心から地域生活中心へ

  • 日本の精神保健医療福祉は、長期入院・社会的入院の解消が長年の課題であり、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本方針が掲げられてきた(入院形態と退院支援)。
  • しかし退院を進めるだけでは、受け皿となる住まい・医療・福祉・地域の理解が伴わず定着しない。個別のサービス整備ではなく、地域全体のシステムとして支える発想が必要とされた。
  • 高齢者分野の地域包括ケアシステムの考え方を精神障害にも応用したものであり、障害福祉計画・医療計画に位置づけられて市町村・都道府県が構築を進めている。

構成要素

にも包括は、次の要素を地域で包括的に確保することを目指す。

構成要素内容の例
住まいアパート等の住まいの確保、居住支援(入居支援・大家との関係調整)、グループホーム
医療精神科医療(外来・訪問診療)、訪問看護、身体合併症への対応、かかりつけ医との連携
障害福祉・介護相談支援、日中活動・就労系サービス、ホームヘルプ、高齢期は介護保険サービスとの連携
社会参加(就労)・教育働く場・学ぶ場・役割の確保。一般就労・福祉的就労・地域活動
地域の助け合い近隣・民生委員・ピアサポート・当事者活動・家族会
普及啓発精神障害への偏見・スティグマの解消、こころの健康に関する教育
  • ポイントは、福祉サービスだけでなく**「当たり前の暮らし」を支える要素(住まい・仕事・人のつながり)**が並んでいることである。支援は「サービスにつなぐこと」に閉じない。

協議の場と各機関の役割

にも包括の中核は、保健・医療・福祉関係者による協議の場を重層的(市町村圏域・保健所圏域・都道府県)に設けることである。

主体主な役割
市町村基盤整備の主体。協議の場の設置、住まい・相談支援・社会参加の体制づくり
保健所圏域レベルの調整。医療と福祉の橋渡し、危機介入・未治療/治療中断者への対応、市町村支援
精神保健福祉センター都道府県レベルの技術支援・研修・困難事例への助言
基幹相談支援センター地域の相談支援体制の中核。協議の場への参画、個別事例からの課題抽出
医療機関退院支援・地域の支援者との連携・訪問診療/訪問看護の展開
ピアサポーター・家族会当事者・家族の視点からの参画。体験に基づく働きかけ
  • 協議の場は(自立支援)協議会と一体的に運営されることも多い。地域の協議体の実情・参加ルートは地域情報に整理する。

相談支援事業所が果たす役割

  • 個別支援の担い手: 退院支援(地域移行支援地域定着支援)、計画相談を通じて、地域生活を支える直接の担い手となる。
  • 地域課題の発見者: 個別ケースで突き当たる壁(入居を断られる・夜間の相談先がない・通院同行の資源がない)は、その地域のシステムの欠落を示す。個別課題を協議の場・協議会に持ち込み、地域課題として言語化することがにも包括への実質的な参画である。
  • ネットワークの結び目: 医療(病院PSW・訪問看護)・住まい(大家・居住支援法人)・地域(民生委員等)をケースを通じてつなぎ、顔の見える関係を蓄積する。

「個別支援→地域課題→体制づくり」の回路を意識する

にも包括は行政の計画上の概念に見えるが、実体は個別支援の積み重ねである。「このケースで困ったこと」を事業所内で終わらせず、基幹相談支援センターや協議会に報告する習慣が、地域のシステムを動かす入口になる(ミクロ・メゾ・マクロの連続性はミクロ・メゾ・マクロ実践参照)。

相談支援専門員の視点

  • 「地域で暮らす」を支える要素のうち、福祉サービスで埋まるのは一部にすぎない。計画作成では住まい・医療・人のつながり・役割まで視野に入れ、インフォーマルな資源を位置づける。
  • 未治療・医療中断・ひきこもり等、制度の狭間にある人への対応は保健所・市町村保健師との協働が鍵になる。日頃から圏域の保健師と連絡関係を作っておく。
  • 普及啓発もにも包括の構成要素である。地域住民・大家・企業からの相談や苦情の場面は、偏見を強化するか理解を広げるかの分岐点であり、相談員の対応そのものが啓発になる。

関連ページ

施策の内容は更新される

にも包括の構成要素・協議の場の枠組みは、障害福祉計画の改定等により更新される。実務では最新の厚生労働省資料・自治体の障害福祉計画を確認すること。