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バリアフリーと合理的配慮

障害のある人の社会参加を妨げるのは本人の機能障害そのものではなく、社会の側にあるバリア(障壁) である——この社会モデルの考え方(医学モデルと社会モデル)を実装するのが、事前的・面的な整備であるバリアフリーと、個別的な調整である合理的配慮である。相談支援専門員は、本人を環境に合わせるだけでなく環境を変える選択肢を常に持っておきたい。

4つのバリア

障害者施策では、社会にあるバリアを次の4つに整理してきた。

バリア内容
物理的バリア建物・交通・設備の障壁段差、狭い通路、車いすで使えないトイレ、音声のみの券売機
制度的バリア制度・ルールが参加を排除する障壁資格・受験の欠格条項、障害を理由とする利用制限
文化・情報面のバリア情報が届かない・使えない障壁音声のみのアナウンス、文字のみの案内、難解な文書、字幕・手話のない放送
意識上のバリア心の障壁偏見・無関心、「かわいそう」という一方的な保護、無理解による排除
  • 物理的バリアは目につきやすいが、制度・情報・意識のバリアが本人の participation(参加)を阻んでいるケースは相談支援の現場に多い。困りごとを聞くとき「どのバリアの問題か」を意識すると、働きかける先(建物か・ルールか・情報保障か・周囲の理解か)が明確になる。

バリアフリー法の概要

  • 正式名称は「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」。建築物を対象とする法律と公共交通を対象とする法律を統合して成立した、事前的な環境整備を進める法律である。
  • 対象は駅・車両等の公共交通機関、一定規模の建築物、道路、路外駐車場、都市公園など。新設等の際に移動等円滑化基準への適合を求め、既存施設には努力義務を課す仕組みが基本である。
  • 市町村が重点地区を定めて面的に整備を進める基本構想の制度や、当事者参加による点検・心のバリアフリー(ソフト面の取組)も法の枠組みに含まれる。
  • 実務との接点: 駅のエレベーター・ホームドア・多機能トイレ・ノンステップバスなどの整備状況は、外出・通所・通勤の経路設計の前提情報になる。

ユニバーサルデザインとの関係

考え方発想
バリアフリー今あるバリアを取り除く(障害のある人・高齢者等を念頭に置いた対応)
ユニバーサルデザイン(UD)はじめから誰もが使えるように設計する(特定の対象を限定しない)
  • 両者は対立ではなく連続的で、実際の施策では「UDの発想で設計し、残る個別のバリアをバリアフリー・合理的配慮で埋める」関係にある。
  • 多機能トイレ・自動ドア・ピクトグラム・音響信号などは、障害のある人のための整備が結果的に誰にとっても使いやすい例である。

合理的配慮との関係

バリアフリー(環境整備)合理的配慮
性格事前的・集団的(不特定多数を想定した備え)事後的・個別的(本人の申出に応じた調整)
根拠バリアフリー法等障害者差別解消法(民間事業者も提供義務)
スロープの設置、点字ブロック会議資料の拡大文字版、筆談での対応、手順の個別調整
  • 両者は補い合う関係にある。環境整備が進むほど個別の合理的配慮の負担は減り、環境整備で拾えない個別性を合理的配慮が埋める(親ページの記載のとおり)。
  • 合理的配慮の法的枠組み・「過重な負担」の考え方・建設的対話については障害者差別解消法と合理的配慮を参照。

移動等円滑化と外出支援サービスの接点

  • 環境整備(ハード)と人的支援(サービス)は、外出を支える両輪である。経路のバリアが解消されれば単独外出できる人もいれば、整備されていても人的支援が必要な人もいる。
  • 人的支援の主な選択肢: 視覚障害者の同行援護、行動障害のある人の行動援護重度訪問介護(外出を含む総合的支援)、市町村の移動支援事業(地域生活支援事業。運用は地域情報で確認)。
  • アセスメントでは「外出できない」を一括りにせず、経路のバリア・移動手段・人的支援・本人の不安のどこに課題があるかを分解する。バリアの問題なら経路変更や施設側への働きかけ、人的支援の問題ならサービス調整、と対応が変わる。

「環境を変える」も計画の選択肢

サービス等利用計画は本人へのサービス提供の計画になりがちだが、通所先のトイレ改修の相談、職場への配慮の申出の支援、行きつけの店への働きかけなど、環境側への働きかけも支援目標になりうる。社会モデルを計画に落とし込む発想である(ICFの環境因子の視点)。

相談支援専門員の視点

  • 相談支援事業所自身が合理的配慮の提供者である。事業所のアクセス・資料の文字サイズ・筆談対応・オンライン面談の選択肢など、自事業所のバリアを定期的に点検する(親ページの記載のとおり)。
  • 意識上のバリアは支援者の中にもある。「危ないからやめておきましょう」が本人の挑戦の機会を奪う過剰な保護=バリアになっていないか、自らを点検する視点を持つ。
  • 個別ケースで見つけた地域のバリア(駅・公共施設・制度運用)は、個別支援で終わらせず自立支援協議会等を通じて地域課題として提起する。ミクロの気づきをメゾ・マクロにつなぐのは相談支援の役割である(ミクロ・メゾ・マクロ実践)。

関連ページ

制度は改正される

バリアフリー法・障害者差別解消法とも改正が重ねられている分野である。義務の範囲・対象施設等の最新の内容は法令・所管省庁の資料で確認すること。