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聴覚・平衡機能障害
聴覚障害は、聞こえの程度・失聴の時期・使う言語(手話か音声か)によって状況がまったく異なる。同じ「聴覚障害」でも支援方法は一人ひとり違うことを前提に、本人の使うコミュニケーション手段を確認して合わせることが支援の第一歩である。平衡機能障害は聴覚と同じ内耳等に由来し、外から見えにくい移動の障害として現れる。
難聴の種類(伝音性・感音性)
| 種類 | 障害の部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 伝音性難聴 | 外耳・中耳(音を伝える部分) | 音が小さく聞こえる。補聴器で音を大きくする効果が出やすい |
| 感音性難聴 | 内耳・聴神経(音を感じる部分) | 音がひずんで・こもって聞こえる。「音は聞こえるが言葉が聞き取れない」。大きくすれば分かるとは限らない |
| 混合性難聴 | 両方 | 両方の性質を併せ持つ |
- 加齢性難聴・騒音性難聴の多くは感音性である。「大きな声で話せば伝わる」は感音性には通用しない。ゆっくり・はっきり・静かな環境で話すほうが有効である。
先天性(ろう)と中途失聴・難聴
| 区分 | 特徴 | 主なコミュニケーション手段 |
|---|---|---|
| ろう | 主に言語獲得前からの失聴。手話を第一言語とする人が多い | 手話、筆談 |
| 難聴 | 聞こえにくさの程度は幅広い | 音声+補聴機器、筆談、要約筆記 |
| 中途失聴 | 音声言語獲得後の失聴。話せるが聞こえない | 筆談、要約筆記(手話は未習得のことが多い) |
- ろう文化: 手話は日本語の代用ではなく独自の文法を持つ独立した言語であり、手話を共有する集団には固有の文化・アイデンティティがある。ろう者にとって日本語(書記日本語)は第二言語に近く、筆談なら完全に通じるとは限らない。難しい漢語を避け、短文で書く配慮が要る。
- 中途失聴: 流暢に話せるため、聞こえの困難が最も見過ごされやすい(親ページの「話せる=聞こえているではない」)。会話から取り残される孤立感・失聴の喪失体験への心理的配慮が必要である。
コミュニケーション手段の多様性
- 手話: ろう者の第一言語。通訳を介す場合も、話しかける相手は通訳者ではなく本人である。
- 筆談: 幅広く使えるが、時間がかかる・複雑な内容に不向き。要点を短文で。スマートフォンの音声認識アプリを筆談代わりに使う人も増えている。
- 読話(口話): 口の形から読み取る。読み取れる割合は限られ、推測で補っているため、読話だけに頼らせない。マスクは読話を不可能にする。
- 補聴器: 音を増幅する。雑音下・複数人の会話は依然苦手。装用していても「全部聞こえている」わけではない。
- 人工内耳: 内耳に電極を埋め込む手術による医療機器。装用後も聞こえ方には個人差が大きく、訓練を要する。
- 手段は択一ではなく、場面と相手によって組み合わせて使われる。「あなたとの面談ではどの方法がよいか」を本人に確認するのが最も確実である。
意思疎通支援事業(手話通訳・要約筆記)
- 市町村の地域生活支援事業として、手話通訳者・要約筆記者の派遣等が行われる(地域生活支援事業)。要約筆記は話の内容を要約して文字で伝える方法で、中途失聴・難聴者に適する。
- 派遣の対象場面・申込方法・費用は市町村により異なるため地域情報を確認する。医療・行政手続き・面談など権利や生活に関わる場面では、家族任せにせず公的な通訳を使うことが原則である(家族通訳は正確性・中立性・本人のプライバシーに課題がある)。
- 面談の日程調整では通訳手配の時間を見込む。通訳者には事前に趣旨・資料を共有すると質が上がる。
「見えにくい」障害としての聞こえの障害
- 外見から分からないため、「無視された」「返事をしない」と誤解され、人間関係のトラブルや孤立につながりやすい。
- 音声のアナウンス(災害情報・呼び出し)・電話が使えないことは、情報とサービスへのアクセスの障害である。電話リレーサービス(通訳オペレーターを介した電話)等の代替手段の情報提供が役立つ。
- 会議・雑談など複数人の音声のやりとりから取り残される「情報の孤立」は、職場定着の隠れた課題になる。就労定着支援等と連携する際に共有したい視点である。
平衡機能障害
- めまい・ふらつきにより、立位保持・歩行が不安定になる。内耳や小脳等の障害に由来し、聴覚障害と合併することもある。
- 生活への影響: 転倒リスク、階段・暗所・人混みの困難、乗り物の困難、症状の変動(良い日と悪い日)。外見からは「ふらついて見える」程度で深刻さが伝わらず、飲酒等と誤解されることさえある。
- 外出をあきらめて活動範囲が縮小しやすい。移動支援・同行の必要性は「歩けるかどうか」でなく「一人での外出に危険・不安がないか」で評価する。
面談の設定でできる配慮
静かな個室(雑音は補聴器の敵)、正面から口元が見える位置(逆光・マスクを避ける)、1人ずつ話す、重要事項は必ず文字でも渡す、通訳者の座る位置は本人が話者と通訳を同時に視野に入れられる場所。設定の工夫だけで伝わり方は大きく変わる。
相談支援専門員の視点
- 初回に本人の使う手段を確認し、記録に残して事業所内で共有する(毎回聞き直さない)。ろう者との面談で通訳なしの筆談だけで済ませると、同意の質が担保できない場面がある。
- 「うなずいているが伝わっていない」ことがある。要所で本人の言葉で言い返してもらうなどの理解確認を組み込む。
- 聞こえの障害・平衡機能障害は高齢期に増える。加齢に伴う変化を「年のせい」で片づけず、補聴器・手帳・意思疎通支援の制度につなぐ視点を持つ。
- 面接の具体的技法は障害特性に応じた面接の配慮・非言語コミュニケーションも参照。