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肢体不自由
上肢・下肢・体幹の運動機能の障害を指し、身体障害の中で最も人数の多い分類である。同じ「歩けない」でも原因疾患により随伴する症状(感覚障害・不随意運動・進行性など)が大きく異なるため、原因疾患ごとの特徴を押さえたうえで、住環境・補装具・介助体制との組み合わせで生活を捉えることが実務の基本になる。
主な原因疾患と特徴
| 原因 | 特徴 | 実務で押さえるポイント |
|---|---|---|
| 脳性まひ | 出生前後の脳損傷による運動・姿勢の障害。まひの型(痙直型・アテトーゼ型等)により動きの特徴が異なる | 障害自体は非進行性だが、成人期の二次障害(頚椎症・変形・痛み)で機能が低下しやすい |
| 脊髄損傷 | 損傷部位より下のまひ。感覚障害・排尿排便障害・体温調節障害を伴う | 褥瘡・尿路感染のリスク管理。受傷前後の生活の落差への心理的支援 |
| 脳血管障害の後遺症 | 片まひが典型。高次脳機能障害・失語症・嚥下障害を合併しうる | 見えない障害の合併を見落とさない(高次脳機能障害の理解) |
| 切断 | 事故・疾患(糖尿病等)による四肢の切断。義肢で補完する | 義肢の適合・断端の管理。幻肢痛がある場合も |
| 関節疾患 | 関節リウマチ等。痛み・変形・可動域制限 | 症状の日内変動・天候による変動がある。「できる日」を基準にしない |
| 神経筋疾患 | 筋ジストロフィー、ALS等の進行性疾患 | 進行を見越した先手の対応。難病制度との併用(難病と障害福祉サービス) |
部位別の理解
- 上肢: 食事・更衣・書字・スマートフォン操作など巧緻動作に影響する。自助具・環境調整で補える部分が大きい。
- 下肢: 立位・歩行・移乗に影響する。杖・装具・車いす(手動・電動)の選択と、移動経路(段差・距離・トイレ)の確認が要点。
- 体幹: 座位保持そのものが難しくなる。座位保持装置・姿勢保持のクッション等がないと、日中活動への参加自体が制約される。
脊髄損傷の損傷レベルと生活(概説)
損傷した脊髄の高さ(レベル)より下の運動・感覚が障害される。おおまかには次のとおり。
| 損傷部位 | まひの範囲 | 生活像の目安 |
|---|---|---|
| 頸髄(首) | 四肢まひ(上肢にも障害) | 損傷の高さにより、全介助〜電動車いす・自助具で一部自立まで幅が大きい |
| 胸髄・腰髄 | 対まひ(主に下肢) | 上肢が使えるため、車いす・住環境整備により日常生活・就労の自立度は高くなりうる |
- レベルは目安であり、完全損傷か不全損傷かでも残存機能は大きく異なる。「何ができて何に介助が要るか」は必ず本人の実際の生活で確認する。
- まひだけでなく、排尿・排便の管理(自己導尿・摘便等)、起立性低血圧・体温調節障害、**痛み(しびれ)**が生活の質を左右する。本人が語らなくても確認したい領域である。
二次障害の予防
- 褥瘡: 感覚障害があると痛みで気づけない。座位時間・除圧(プッシュアップ等)・クッションの適合・皮膚観察の体制を関係者で共有する。発生すれば長期の治療・生活制限につながる。
- 過用・誤用による障害: 車いす駆動や松葉杖による肩・手首の障害、脳性まひの頚椎症など、「使いすぎ」による機能低下が加齢とともに起こる。「昔できた動作ができない」変化は計画見直しのサインとして扱う(親ページの視点と同じ)。
- 拘縮・変形・体力低下: 活動量の減少が悪循環を生む。リハビリ専門職(PT・OT)の関与、自立訓練(機能訓練)の活用を検討する。
住環境整備・移動支援の視点
- アセスメントは動線で見る: 玄関の段差→廊下幅→トイレ→浴室→寝室。住宅改修・福祉用具・介助のどの組み合わせで解決するかを考える。
- 屋外は移動手段・経路・目的地の設備をセットで確認する(車いす対応トイレ、駐車場、公共交通のエレベーター)。
- 車いす・装具等は補装具・日常生活用具の制度を用い、身体状況・生活場面に合わせて選定・適合する。体格や身体状況の変化で「合わなくなる」ことを前提に、モニタリングで確認する。
- 環境側の整備の考え方はバリアフリーと合理的配慮を参照。
「移乗」を具体的に聞く
ベッド⇔車いす、車いす⇔トイレ、車いす⇔車の移乗が、それぞれ自立か・見守りか・介助か(介助者は誰か、リフト等の機器はあるか)で、必要なサービス量と介助者の負担は大きく変わる。「移動はどうしていますか」ではなく移乗場面ごとに確認する。
関連するサービス
- 訪問系: 居宅介護(身体介護・家事援助)、重度の場合は重度訪問介護(長時間・見守りを含む総合的な支援)
- 日中活動: 生活介護、機能維持・向上には自立訓練(機能訓練)
- 泊まり・住まい: 短期入所、共同生活援助(グループホーム)、施設入所支援
相談支援専門員の視点
- 原因疾患が進行性か非進行性か、感覚障害を伴うかは、支援の組み立てを左右する基本情報である。医学的詳細ではなく「今後の見通し」と「リスク」を医療職に確認する。
- 中途障害(脊髄損傷・脳血管障害)では、身体機能の話の前に喪失体験への心理的支援が必要な時期がある。本人のペースを尊重しつつ、ピアサポートや当事者団体の情報も選択肢として持つ。
- 介助者(多くは家族)の腰痛・疲弊は在宅生活の継続を脅かす。本人のアセスメントと同時に介助方法と介助者の負担を確認し、機器の導入やサービスでの代替を提案する。
関連ページ
医学的判断は医療機関へ
本ページは支援者向けの概説である。個別の疾患管理・リスク評価・リハビリの適否は、主治医・リハビリ専門職に確認すること。