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アドボカシーの類型

アドボカシー(権利擁護・代弁)は「誰の権利を」「誰が」擁護するかによっていくつかの類型に整理される。類型を知ると、いま自分がしている支援がどの位置づけの権利擁護なのか、そして次にどの形へ移行すべきかが見えるようになる。

対象による分類: ケースとコーズ

類型対象内容相談支援での例
ケースアドボカシー個人・個別世帯個別の利用者の権利・利益を守り、代弁するサービス担当者会議で本人の意向を代弁する、不利益な取り扱いに事業所・行政へ働きかける
コーズアドボカシー(クラスアドボカシー)同じ課題を持つ集団・地域全体課題の原因(cause)である制度・環境そのものに働きかける(自立支援)協議会で地域課題を提起する、社会資源の不足を行政に提案する
  • コーズアドボカシーはクラスアドボカシーとほぼ同義で使われる。個別の課題(ケース)の背後に共通の構造があるとき、個別対応だけで終えずに制度・地域への働きかけ(コーズ)につなげる。
  • ミクロ(個別)からメゾ・マクロ(組織・地域・制度)への展開として整理できる(→ミクロ・メゾ・マクロ実践)。

担い手による分類

類型担い手内容
セルフアドボカシー本人自身本人が自分の権利・意向を自分で主張する。本人活動(ピープルファースト等)がその集団的な形
ピアアドボカシー同じ立場の仲間(ピア)障害のある仲間どうしが互いの権利主張を支え合う。ピアサポーターの活動が代表例
シチズンアドボカシー市民・ボランティア対価によらず、市民が対等な関係で本人の権利を支える。市民後見人の活動もこの系譜にある
リーガルアドボカシー弁護士等の法律専門職法的手段(交渉・審査請求・訴訟・成年後見等)を用いて権利を擁護する
専門職アドボカシーソーシャルワーカー等の対人援助職職務として本人の権利を擁護する。相談支援専門員の権利擁護はここに位置づく

相談支援の場面を類型にあてはめる

場面主な類型
サービス担当者会議で本人の意向を代弁するケースアドボカシー(専門職アドボカシー)
本人が自分の言葉で意向を伝えられるよう面接・会議の環境を整えるセルフアドボカシー支援
ピアサポーターや本人活動への参加をつなぐピアアドボカシー・セルフアドボカシーの基盤づくり
虐待通報・成年後見の申立て支援・審査請求の助言リーガルアドボカシーへの橋渡し(→成年後見制度障害者虐待防止法)
協議会への地域課題の提起、社会資源の開発提案コーズアドボカシー

代弁は最終手段、目標はセルフアドボカシー

専門職による代弁(ケースアドボカシー)が長く続く状態は、本人の力を奪っている可能性がある。「代弁する→一緒に言う→本人が言うのを隣で支える→本人が言う」という段階を意識し、常にセルフアドボカシーへの移行可能性を問い直す。これはエンパワメント(エンパワメント)の実践そのものである。

実務での使い方

  • 記録に類型の視点を持ち込む: 「本人の意向」欄に書いた内容が、本人の言葉か、支援者の代弁か、家族の意向かを書き分ける。代弁した場合は、なぜ代弁が必要だったか(表明の困難)と、表明支援の工夫を記録する。
  • ケースからコーズへの回路をつくる: 同じ困りごと(通所先がない、住まいが見つからない等)が複数ケースで続くなら、それは個別課題ではなく地域課題。協議会・基幹相談支援センターに上げる。
  • 担い手を組み合わせる: 専門職だけで抱えず、ピア・市民・法律職を組み合わせる。特に法的争点(financial abuse、差別事案、不服申立て)は早めにリーガルアドボカシーへつなぐ。

相談支援専門員の視点

  • 「本人のために動く」ことと「本人の代わりに決める」ことは違う。アドボカシーの中心は本人の意思であり、意思決定支援(意思決定支援)と一体で考える。
  • 代弁がうまくいくほど周囲は相談支援専門員に聞くようになり、本人不在が進むという逆説がある。会議では「本人に聞いてみましょう」と本人へ話を戻すのも重要な技術。
  • コーズアドボカシーは一人ではできない。個別支援で得た気づきを協議会に持ち込める形(件数・具体例・提案)にして言語化する。

関連ページ

制度・用語の確認

アドボカシーに関わる各制度(虐待防止・差別解消・成年後見等)の内容は改正されることがある。実務で用いる際は最新の法令・自治体資料で確認すること。