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心理社会的アプローチ

状況の中の人(person-in-situation)」という視点から、本人の心理的側面と社会環境の両面を統合的に理解し、支持・受容を土台に働きかける伝統的アプローチ。ケースワークの源流の一つであり、現在の相談援助の「基本姿勢」の多くはここに由来する。

基本情報

項目内容
主な提唱者ゴードン・ハミルトン(G. Hamilton)、フローレンス・ホリス(F. Hollis)
理論的基盤精神分析理論(自我心理学)、のちに役割理論・システム理論も取り込む
中心概念状況の中の人、支持、受容、自己決定
期間の性格長期・継続的な関わりを想定
系譜診断主義学派(診断派)。機能的アプローチ(機能派)と対をなす

理論的背景

  • リッチモンド(M. Richmond)以来の「社会診断」の流れを汲み、フロイトの精神分析理論を取り入れて発展した診断主義学派の中心的アプローチ。
  • 「調査(社会調査)→ 診断(心理社会的診断)→ 処遇(治療)」という医学モデルに近い援助過程をとるが、対象はあくまで「病理」ではなく生活のしづらさであり、心理と環境の両方に働きかける点が心理療法と異なる。
  • 1960年代以降、ホリスは役割理論・社会学の知見も統合し、「心理社会的」の名のとおり環境要因を等価に扱う方向へ理論を発展させた。

中心概念

状況の中の人(person-in-situation)

人・状況・その相互作用の3つを一体として捉える見方。「本人に問題がある」「環境が悪い」のどちらか一方に還元せず、人と状況の全体関連性の中で生活課題を理解する。

支持と受容

働きかけの土台は、本人の不安を和らげ「この人には話せる」と感じてもらう支持的な関係にある。行動や感情をまず評価せずに受けとめる(受容)ことが、その後のあらゆる介入の前提になる。

援助の技法(ホリスの分類)

ホリスは介入技法を次の6つに分類した。面接で「今自分はどれをしているか」を自覚する枠組みとして今も有用。

技法内容場面の例
持続的支持傾聴・受容・再保証により不安を和らげる初回面接、関係形成期の全般
直接的指示助言・提案・意見表明で行動を後押しする「まず受診だけはしましょう」と背中を押す
浄化法(カタルシス)感情の表出を促し、緊張を解放する家族を亡くした直後の感情の吐き出し
人と状況の全体的反省現在の状況・他者との関係・自分の行動について一緒に考える「通所をやめたくなるのはどんなとき?」の振り返り
パターン力動的反省本人の反応の傾向・パターンに気づきを促す「困ると連絡を絶つ」パターンを一緒に言語化する
発達的反省生育歴・過去の経験と現在のパターンのつながりを考える施設で育った経験と対人不信の関連を扱う

実務では「上3つ」が中心

持続的支持・直接的指示・浄化法は日常の相談支援で常に使う。下3つの「反省(reflection)」系は本人の内面に踏み込む度合いが強く、関係ができてから、本人が振り返りを望むときに慎重に使う。

向いている場面

  • 生活歴・家族関係が複雑で、信頼関係の形成自体が支援の中心になるケース。
  • 支援拒否・サービス中断の経験があり、時間をかけた関わりが必要な人。
  • 喪失体験・長い挫折体験があり、感情の受けとめを抜きに手続きを進められないケース。

向いていない場面・限界

  • 緊急対応が必要な場面(→危機介入アプローチ)。時間をかける前提のアプローチであり、切迫した危機には向かない。
  • 期限を区切って具体的な生活課題を解決したい場面(→課題中心アプローチ)。
  • 生育歴の探索が本人にとって侵襲的になるケース。過去を扱うことは義務ではない。
  • 「長期的な関わり」が漫然とした支援の言い訳にならないよう、目的の自覚が要る。

相談支援での活用

  • 基本相談の局面そのもの。支援拒否歴のある人への継続訪問で、すぐサービスにつなげず、生活歴の聞き取りと受容的な関わりを通じて関係をつくる過程は、このアプローチの実践である。
  • アセスメントで生活歴・家族歴を丁寧にとる様式の背景には、この学派の「社会診断」の伝統がある。生活歴を聞く意味(現在のパターンの理解)を自覚すると聞き取りの質が変わる。
  • サービス等利用計画の「総合的な援助の方針」を、心理面への配慮と環境調整の両輪で書く発想の土台になる。

相談支援専門員の視点

  • 「まず関係、それから手続き」という相談支援の常識は、このアプローチが源流。急がば回れの理論的根拠として押さえておく。
  • 持続的支持は万能に見えて、それだけでは生活は変わらない。支持で関係をつくり、他のアプローチ(課題中心・解決志向など)へ掛け替えるタイミングを意識する。
  • 発達的反省(過去とのつながりの探索)は心理職の領域と重なる。深いトラウマが見えたら抱え込まず、医療・心理職へのリファーを検討する。

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