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傾聴の技法

傾聴は「黙って聞くこと」ではなく、相手が安心して語り続けられる場を能動的につくる技術である。相談支援の面接では、傾聴の質がそのまま得られる情報の質と本人の意向表明の深さを決める。

受動的傾聴と積極的傾聴

種類内容主な技法
受動的傾聴口を挟まず、相手のペースで語ってもらう。聴いている姿勢を非言語で伝えるうなずき・相づち・沈黙・視線・姿勢
積極的傾聴聴き取った内容を言葉で返し、理解を確認しながら深める繰り返し・言い換え・感情の反射・要約(→応答技法)
  • 面接の序盤や感情が溢れている場面は受動的傾聴を厚めに、話が広がってきたら積極的傾聴で整理する、と局面で比重を変える
  • 積極的傾聴の概念はロジャーズ(C. Rogers)の来談者中心療法に由来し、共感的理解・無条件の肯定的関心・自己一致という聴き手の基本姿勢とセットで理解する。

うなずき・相づち・沈黙

技法効果的な使い方逆効果になる使い方
うなずき相手の話のリズム・区切りに合わせる。深さに変化をつける機械的な連発、話の内容と無関係なタイミング
相づち「ええ」「そうでしたか」「それで?」と短く、続きを促す「なるほどなるほど」の連発、相手の語尾に被せる
沈黙本人が考えている沈黙は視線と姿勢を保って待つ沈黙を恐れて質問を重ねる、話題を変える

沈黙の見分け方

沈黙には種類がある。対応を変える。

  • 考えている沈黙: 視線が動く・宙を見る。待つのが正解。
  • 感情が動いている沈黙: 涙ぐむ・うつむく。急かさず、「ゆっくりで大丈夫です」と場を保障する。
  • 質問が伝わっていない沈黙: 表情が固まる・目が泳ぐ。責めずに、より平易な言葉で言い直す。
  • 話したくない沈黙: 体が閉じる・視線を切る。深追いせず、「この話は今日はやめておきましょうか」と選択権を返す。

話の腰を折らない工夫

  • 相手の話が一段落するまで、確認したいことは頭の中に保留しておき、区切りで「先ほどの◯◯のことを聞いてもいいですか」と戻る。
  • 話が長く脱線しても、すぐ遮らない。要約を挟んで「その中で特に困っているのはどれですか」と焦点を絞る(遮断ではなく整理で戻す)。
  • 時間の枠を守る必要があるときは、面接冒頭に所要時間を伝えておくと、途中で切り上げる際も唐突にならない。

聞きながらのメモの是非

論点考え方
メモを取るか事実情報(日付・数値・固有名詞)はメモしてよい。感情が語られている場面ではペンを置く
断りを入れる「大事なことなので書き留めてもいいですか」と冒頭に確認する。何を書いているか問われたら見せられる書き方をする
視線の配分手元を見る時間が長いと「紙と話している」印象になる。書く量は最小限にし、面接直後に記録を補完する
様式の扱いアセスメント様式を面前で上から埋めない。様式は面接後に整理する(→アセスメント面接の組み立て)

傾聴を妨げる支援者側の要因

傾聴の失敗は技法の不足より、聴き手の内側の要因で起きることが多い。

妨げる要因起きること対策
先入観・決めつけ事前情報や診断名で聴く前から筋書きを持ち、合う情報だけ拾う事前情報は仮説と自覚する。「意外だった点」を面接後に振り返る
時間圧次の予定が気になり、話を急がせる・結論に飛ぶ面接件数の詰め込みを避ける。時間がないなら短い面接を複数回に設計する
解決の急ぎ困りごとを聞くとすぐ助言・サービス提案を始めてしまう「まだ提案しない」と決めて聴く時間をつくる。正したい反射(→動機づけ面接)を自覚する
評価的態度良い/悪いのジャッジが表情や相づちに出る事実と価値判断を分けて聴く。自分の価値観が刺激される話題を知っておく
支援者自身の疲労・不安集中が切れる、自分の不安を埋めるために喋りすぎる体調管理と、面接の振り返り(スーパービジョン)で癖を知る

「聴けているか」は発話量で自己点検できる

面接を録音・逐語にすると、支援者が想像以上に喋っていることが多い。目安として、本人の発話が支援者より多い面接になっているかを振り返る。助言・説明が必要な面接でも、前半は聴く時間として確保する。

相談支援での活用

  • インテーク: 主訴の聴き取りは受動的傾聴を厚く。最初の10分で遮らずに聴けたかが、その後の関係を左右する。
  • モニタリング: 「変わりないですか」で終わらせず、生活の変化を開かれた質問で聴き、傾聴で広げる(→質問技法)。
  • 意思決定支援: 本人の意向は、急がされない場で語られてはじめて表に出る。傾聴は意思決定支援の前提技術である。

相談支援専門員の視点

  • 傾聴は「時間がかかる非効率な聴き方」ではない。急いだ面接は情報が浅くなり、計画の練り直し・関係修復に余計な時間がかかる。傾聴は結果的に最短の道であることが多い。
  • 知的障害・精神障害のある人との面接では応答に時間がかかることを前提に、沈黙を待つこと自体が最も基本的な合理的配慮になる(→障害特性に応じた面接の配慮)。
  • 自分の傾聴の癖(遮り癖・助言癖)は自覚しにくい。同行訪問での相互観察や逐語での振り返りを事業所のOJTに組み込む。

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