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バイオ・サイコ・ソーシャルモデル

人の生活課題を**生物的(Bio)・心理的(Psycho)・社会的(Social)**の3側面から統合的に捉えるモデル。アセスメントの抜け漏れ点検と、多職種連携での「共通言語」という2つの実務価値があり、相談支援のアセスメント様式の背後にある基本枠組みでもある。

提唱の背景 — 生物医学モデルへの批判

  • 米国の精神科医エンゲル(G. L. Engel)が1977年に提唱した。
  • 当時の医学を支配していた生物医学モデル(疾患を身体の生物学的異常のみで説明し、治療は身体への介入に限る考え方)では、患者の苦しみや療養行動、回復の個人差を説明できないと批判した。
  • 病気と健康は、生物・心理・社会の各水準が相互に影響し合うシステムとして理解すべきだとした。システム理論(システム理論・生態学的視点)の医学への応用と位置づけられる。
  • もともと「全人的に見る」ことを本領としてきたソーシャルワークにとって親和性が高く、医療・心理・福祉をつなぐ枠組みとして定着した。

3側面の内容

側面見る内容アセスメントでの例
バイオ(生物)疾患・障害特性・服薬・体調・ADL診断名、発作の頻度、服薬状況、睡眠、体力、痛み
サイコ(心理)感情・認知・意欲・自己像・トラウマ障害受容の状態、不安・抑うつ、成功体験、支援への構え、対処スタイル
ソーシャル(社会)家族・住まい・経済・所属・制度利用家族の介護力、収入と債務、就労・日中活動、友人関係、利用中のサービス

3側面は相互に影響し合う

3側面は独立したチェック欄ではなく、互いに原因にも結果にもなる。矢印で結んで考えることがこのモデルの本体である。

影響の向き
バイオ → サイコ幻聴の悪化で外出への不安が強まる
サイコ → バイオ服薬への抵抗感から怠薬し、症状が再燃する
ソーシャル → サイコ家族との口論が続き、自己評価が下がる
バイオ → ソーシャル体力低下で通所日数が減り、居場所を失う
ソーシャル → バイオ経済的困窮で受診を控え、体調が悪化する

一つの側面だけに介入しても、他の側面からの悪循環が残れば効果は続かない。逆に、どの側面から介入してもよいということでもある。医療的に動かせない課題でも、社会面からの介入で生活は変えられる。

アセスメントでの使い方 — 3側面チェックの実際

  1. 聞き取った情報を3側面に仕分けてみる(様式の項目に沿って書いた後の点検として行うと現実的)。
  2. 空白の側面を確認する。「サービスの希望」だけ聞いて心理面が空白、診断名だけあって生活状況が薄い、といった偏りが可視化される。
  3. 側面をまたぐ矢印(悪循環・好循環)を1〜2本描いてみる。ここが見立ての中核になる。
  4. 介入点を選ぶ。悪循環のどこを断つか、好循環のどこを太くするかを計画の目標に落とす。

「3つ書けた」で終わらせない

3側面モデルの誤用は、3欄を埋めて満足すること。3側面がどうつながって今の生活課題を作っているかという循環の見立てまで書けて、はじめて計画の「総合的な援助の方針」の材料になる。

多職種連携での共通言語として

  • 医師・看護師はバイオ、心理職はサイコ、福祉職はソーシャルに強みを持つ。BPSは各職種の見立てを同じ地図の上に載せるための共通フォーマットになる。
  • 担当者会議やケース会議で「バイオ面は安定しているが、ソーシャル面の孤立が心理面の不安を強めている」といった整理で話すと、職種間で見立てを共有しやすい。
  • 医師意見書・看護サマリー等の医療情報を受け取ったとき、それが主にバイオ面の情報であると自覚しておくと、残り2側面を自分が補うという役割意識が持てる。
  • 3側面を貫いて全体像を描くことは、他職種に代替されにくいソーシャルワーカーの持ち味である。

相談支援専門員の視点

  • アセスメント様式の項目(健康状況・心理状況・家族状況・経済状況…)は、実質的にBPSの展開である。様式の背後にこのモデルがあると知ると、項目を埋める作業が見立ての作業に変わる。
  • 相談支援専門員は医学的判断はできないが、バイオ面の情報を集めて位置づけることはできる。「医療のことはわからない」と空欄にせず、本人・家族の語る体調と受診状況を記述し、判断は医療につなぐ。
  • 本人の「困りごとの語り」はたいてい一つの側面に偏る(体調の話ばかり・家族の話ばかり)。残りの側面を意識的に尋ねるのが面接の技術である(→質問技法)。
  • 類似の枠組みであるICFは生活機能の分類、BPSは因果の見立てに強い。用途で使い分ける。

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