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エコマップ・ジェノグラム
家族関係と社会資源とのつながりを1枚の図にする、アセスメントの定番ツール。文章の要約より一目で全体が伝わり、本人と一緒に描けば面接の道具にもなる。ジェノグラム(家族関係図)とエコマップ(社会関係図)は役割が違うので、セットで使い分ける。
| ツール | 図示するもの | 使いどころ |
|---|---|---|
| ジェノグラム | 三世代程度の家族の構成と歴史 | 家族構成・キーパーソン・世帯の歴史の把握。ヤングケアラー、8050問題の可視化 |
| エコマップ | 本人・家族と社会資源のつながりと関係の質 | 支援ネットワークの過不足の把握。関係が薄い・対立している資源の発見 |
考案の系譜としては、エコマップはハートマン(A. Hartman)が生態学的視点(システム理論・生態学的視点)を実務ツール化したもの、ジェノグラムは家族療法の分野で体系化されたものである。
ジェノグラムの書き方
基本記号
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| □(四角) | 男性 |
| ○(丸) | 女性 |
| 二重線の□・○ | 本人(中心人物) |
| 記号の中の×(または塗りつぶし) | 死亡 |
| □—○ を横線で結ぶ | 婚姻関係 |
| 横線に斜線2本(//) | 離婚(1本は別居とする流儀もある) |
| 夫婦の横線から下へ縦線 | 子(左から出生順に並べる) |
| 記号の脇に数字 | 年齢 |
- 記号・線種は流儀により細部が異なる。事業所内で凡例をそろえるか、図中に凡例を書き添えれば足りる。
三世代の範囲で描く
- 本人を中心に祖父母〜孫の三世代程度を描くのが標準。家族の歴史(介護の担い手の変遷、死別・離別の時期)が見える範囲として三世代が実用的である。
- 各人に年齢・職業・健康状態・障害や疾患など、支援に関係する情報を短く書き添える。
同居範囲の示し方
- 同居している人々を線(囲み)で囲む。ここが支援上もっとも重要な情報の一つで、「戸籍上の家族」と「実際に一緒に暮らす世帯」のずれが一目でわかる。
- 囲みの外にいる家族(別居の子、施設入所中の親など)との距離感・交流頻度は書き添えで補う。
エコマップの書き方
- 紙の中央にジェノグラム(または本人・同居家族)を置く。
- 周囲に関わりのある社会資源を円で配置する——親族、友人・知人、医療機関、サービス事業所、職場・学校、行政、近隣、趣味の場、宗教等。
- 本人(家族)と各資源を線で結び、線種で関係の質を表す。
| 線種 | 意味 |
|---|---|
| 太い実線 | 強いつながり・頼れる関係 |
| 細い実線 | ふつうのつながり |
| 点線 | 弱い・希薄なつながり |
| 波線(またはギザギザ線) | ストレス・葛藤のある関係 |
| 矢印(→・↔) | 働きかけ・支援の向き(一方向か相互か) |
- 線種の約束事も流儀があるため、図の隅に凡例を必ず書く。
- 資源との距離(円の遠近)で心理的距離を表現する描き方もある。
作成の手順と面接での使い方
- 本人・家族と一緒に描くことに大きな意味がある。完成品を見せるのではなく、白紙から「他に付き合いのある人はいますか」「この関係はどんな感じですか」と尋ねながら描くと、それ自体がアセスメント面接になる。
- 一緒に描く効果は3つある。①語りにくいこと(家族の葛藤等)も図を媒介にすると話しやすい、②本人自身が自分のネットワークを俯瞰でき、気づきが生まれる、③「支援者に調べられる」のではなく「一緒に整理する」協働の体験になる(ラポール形成にも寄与する)。
- 描き上がったら空白と偏りを一緒に眺める。「サービスばかりでインフォーマルなつながりがない」「男性親族と全員葛藤関係にある」など、文章では埋もれる構造が見える。
- 作成日を必ず記入する。図はあくまでその時点のスナップショットである。
モニタリングでの更新
- モニタリング時に日付を変えて描き直す(または上書きでなく新版を作る)と、支援ネットワークの変化が図の比較で見える。点線だった事業所との線が実線になった、葛藤線が消えた——これは支援経過の何よりの記録になる。
- 変化がないこと自体も情報である。計画で「地域とのつながりづくり」を掲げたのにエコマップが変わっていなければ、計画の見直しを検討する材料になる(→モニタリング)。
担当者会議資料としての活用
- 文章のアセスメント要約より関係者間で共有しやすい。初参加の事業所も、1枚の図で世帯の全体像とネットワークをつかめる。
- 会議の場で図を囲むと、「この空白を誰が埋めるか」「この葛藤関係に誰が入るか」という役割分担の議論が具体的になる。
- 個人情報の塊であるため、配布・回収のルールは事業所内で定めておく。会議後に回収する、綴じ込み資料には簡略版を使う等の配慮をする。
図は「解釈」を固定しない
図にすると分かった気になりやすいが、線1本の裏には本人の複雑な思いがある。「お母様とは波線(葛藤)でいいですか?」と本人に確認しながら描き、支援者の解釈で勝手に線を引かない。また、図は関係の「現在」を写すだけで、そうなった経緯・意味は語りで聞くしかない。図はアセスメントの入口であって結論ではない。
相談支援専門員の視点
- 計画の「総合的な援助の方針」が書けないときは、まずエコマップを描いてみる。資源の偏り・空白が見えると、方針の言語化につながる。
- ジェノグラムは世帯の時間軸(親の高齢化、きょうだいの独立)を意識させてくれる。「親亡き後」の備えの話題を切り出す土台になる。
- 8050問題・ヤングケアラーなど世帯複合課題は、本人単体のアセスメントでは見落とす。ジェノグラムを描く習慣が発見の網になる。
- 手描きで十分である。きれいに清書することより、面接の場でさっと描ける・更新できることのほうが実務価値が高い。